散乱
辺りを見回し、ため息をつく
あちらこちらに散乱した紙
放り出したままの道具
片隅に積み上げられた本
散らかった室内
わざと散らかした訳じゃないことは良く解ってる
きちんと仕事をしている事も知っている
知ってはいるけれど………
もう一度深くため息
部屋の主は仕事に出かけたまま、ここ数日帰ってはいない
緊急事態が起きたとかで、慌てて出て行ったのが2日ほど前の事
「慌てて出て行ったのは確かだけど」
ため息と共に紙を集め道具を仕舞う
一体何をしていたんだか
何かをしていた事は確かだけれど
それが何なのかは、良く解らない
散乱していたそれらを片付けて
もう一度辺りを見回す
先程よりはましだとはいえ、片付いたとは言えない室内
「………まぁ、いいか」
これを本当に片付けようなんて思ったら、時間が足りないもの
場所が手狭ではあるけれど、このままで問題は無いものね
本格的な片付けは本人にしてもらおう
そう言い聞かせながら、そっと扉を閉じた
音が響いた
重いものが斃れる音
何かが崩れ落ちる音
音が聞こえた方へ自然に視線が向いて
「………崩れたな」
その言葉に思わず目が合って
「そうね」
そっと目をそらす
少しの間の沈黙
「来ないな」
「………そうね」
きっと賑やかに騒ぎ立てるはずの人がまだ現れない
「………埋まったのか?」
その言葉に私は肯定も否定も出来ない
「………見に行ってくれる?」
さほど長くは無い時間が過ぎて、私はそう言った
賑やかな声と音が聞こえる
彼等は足の踏み場も無くなった室内をどうにか片付けている途中
頑張ってね
の言葉だけを掛けた私はこうやって物音を気にしながらお茶を飲んでいる
………気にはなるけれど
気にはなるから───
そろそろ休憩する様に声を掛けよう
End
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