繁殖
バラムガーデンに備えられた訓練室は不定期に閉鎖される
閉鎖中
扉の前に掲げられた言葉を目にし、悪態と共に引き返す
文字が掲げられた昨日から幾度となく繰り返された光景
「いつになったら開くんだ?」
そんな言葉を小耳に挟んで
こっそりと肩をすくめる
そんな事、解らないわ
訓練施設が不定期に閉められる理由は二つ
一つは、中のモンスターの数が大幅に少なくなったから
その場合は、外からモンスターを捕獲し、補充するまで施設は開かない
もっとも、この場合は補充すれば良い訳だから、どの程度の期間の閉鎖となるのか見当もつき対処もしやすい
ただもう一つの理由は───
閉じられた扉へと視線を向ける
今は閉じた扉を開ける事は出来ない
中の様子は、監視カメラが写しだした映像を見る他無い
二つ目の理由は、モンスターが繁殖した場合
「モンスターの子育てってどの位の期間かかるのかしらね?」
訓練相手となるモンスターが増えることは歓迎すべきこと
そんな理由で施設は閉鎖されている
「モンスターの子供っていってもさ、子供だから可愛いかと思ったんだよな」
疲れたような声がぐすぐすと独り言を告げる
「でもなぁ、モンスターってのはやっぱりモンスターなんだよな」
子供でも不気味だった
言葉はそう続けられたが、それはモンスター次第
幼少期が可愛いかどうかは、モンスターの種類による
………と思う
「チョコボは可愛いよ〜」
「あれは、モンスターとはちょっと違うだろ」
分類状はモンスターだが、危険な生き物では無い
危険なモノでも外見上不気味では無いモノも居るけれど、アレはモンスターで良いのかしらね?
ふと脳裏によぎったモンスター達の姿を首を振ることでかき消す
「っていうか、モンスターって子育てをするんだねぇ」
しみじみとした口調に数人が深く頷く
「………そうね」
育てるかどうかも種類によると思うけれど
生みっぱなしで放置
なんていうモンスターだってそれなりに居る、と聞いた事がある
モンスターの生態なんて詳しくは知らないけれどね
モニターからモンスターの啼き声が聞こえる
「あ、餌の時間だ」
その呟きと同時に皆が一斉にモニター前から移動する
モニターから聞こえるいやな音
「アレはなぁ」
皆が皆いやな顔をして視線を背けている
「………早く終わらないかしら」
思わず呟いた言葉に、誰もが頷いた
閉鎖中の札が外れる
嬉々として施設を利用する生徒達の姿
張り切った彼等の声を耳にしながら疲れ切ったため息がこぼれた
End
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