遠い思い出
人の記憶というのは曖昧だ
どんなに大切な事だって
時間が経つにつれ薄れていってしまう
だから
大切な記憶が薄れる事が無いよう
折りに触れ
何度も思い出す
思い返す
「そういやぁ」
そんな言葉で始まる思い出話
平穏な日常と話す相手が増えた事で、そんな話をする時間が多くなった
「そんな事もあったね」
「そんなことあったっけ?」
話をして言葉が返って
「おう、あの時は───」
そんな風に話を続ける
一時話は盛り上がって
盛り上がって───
ふと、視線が向く
遠い昔と同じ様に、相づちを打つはずの人を探す
無意識の行動に
まだ“あの時”が残っている事を感じて
少しだけ嬉しくなる
いろいろ話して
懐かしい思い出に浸って
尽きないはずの話が尽きる
思い出はやっぱり思い出で
忘れないよう繰り返し思い出した記憶も、すべて残しておける訳じゃない
増えることの無い思い出
話す事の出来る内容も限られている
そして当然の様に変わっていく会話
当たり前の事
どんなに思っても、やっぱり記憶は薄れ、新しい思い出は生まれない
それを思い知らされる機会も増えた
けれど………
ふとした瞬間、刺激される記憶
遠い記憶の欠片がよみがえって
よみがえった小さな記憶は、思い返す事も出来ないうちに埋もれていく
それが日常になる感覚が寂しい
End
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