過去と未来
昔は何も考えてなかった
いや、何もってのはさすがに語弊がある
若い頃は若い頃で考えていた
くだらない事や、どうでも良い様な事
今になってみればくだらないの一言で済んじまうような悩みが、あの頃はとても大きな物だった
それから………
考えたはずの結果、出した結論は
これ以上無く失敗だった
あの時、自分が本当に考えていたのか
考えていたはずの事が、勝手に良い方に改ざんしていたんじゃないかってそう思った
俺ならできるはず
エルを救い出して、そして笑って暮らせるはず
そんな考えは途中まで上手くいって
最後に粉々に砕かれた
手に入れたはずの未来はこぼれ落ちて、何も残らなかった
考えていたはずの未来
その全ては叶えることが出来なくなった
そして
しばらくの間考える事を拒否した
今までの事
それからこれからの事
その全てに目をつぶって
流されるままに生きてきた
これじゃいけないって思い始めたのは何時だったか
………思うだけで、動く事の出来ない日々を送ったのはどの程度の期間だったか
全てが動いたのは、彼等が現れたから
自分の意思では何を行った訳でも無い
ただ、今までと同じ様に
ただ、ただ、流れに身を任せていたら、別の流れが激突してきただけだ
まぁ、その流れが予想外に───
同じ部屋の中
それ程遠くない位置でくつろぐ姿へと目を向ける
手にする前に無くして
一生触れる事が出来ないはずだった存在
この存在のお陰で、考える様になった
今後の事
これからの事
俺は何をしたいのか
………何をするべきなのか
久しぶりに───初めて本気で───考えた
考えた末に、とりあえず動いてみた
まぁ、動いた結果、色々と文句を言われる様になったんだけどな
「………いつまでそうしているつもりだ」
呆れた様に声と視線が向けられる
「んーー、まぁ、もうちっとかなぁ」
一休み
そう言ってここに来たのはつい先刻
別に何をする訳でも無いが、こうやって“現実”を確認することが糧になる
これからの事、今後の事
存在する将来へ目を向けて考え始めたのは全部、彼のお陰だ
大きく伸びをして、重い腰を上げる
「んじゃ、まぁ行ってくるかな」
呟いた言葉に、無言の視線が見送った
End
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