真実と事実
どれほど大切に大事にしたとしても、記憶は色あせ薄れてしまう
忘れる事を恐れて繰り返し繰り返し、何度も思い返したとしてもその記憶はどこか変わってしまう
………変わってしまった
そんな事には気が付かない
答え合わせみたいに、誰かと話をして
そこで食い違いに気が付く
そして、ようやく記憶が改ざんされて居る事に気が付く
………記憶の改ざんは自分では無く、相手が行ったものかもしれないが
ただ、幾度かそんな事があって
嫌でも理解させられる
忘れたくは無い大切な記憶を忘れてしまっている事に
それでも、話題にしなければ全てが消えてしまう様で、時折話をする
過去の記憶
彼女の話
あの日々の事
短い期間の話
そして同じメンバーで繰り返される話は同じような内容で、すぐに話題も尽きる
そんな日々を繰り返してきて、訪れた変化
“あのとき”を知る人
夢中で話をして
違えた記憶に笑いながら、こっそりと落ち込んで
そんな風に日々を過ごしていた頃に告げられた言葉
“過去を見る事が出来る”
その力の事は知っていた
その力で過去を知った人が居ることも知っていた
だが、それが意味することを理解していなかった
あの時、あの場所の様子をもう一度見る事が出来る
それは、随分と魅力的な話
けれど
「んーまぁそうだなぁ………」
魅力的な申し出だったが、考えた末に見送った
記憶は万全じゃない
今覚えている記憶は、真実とは違っているだろう
けれど、今の俺にはこれが事実だ
もう一度、会いたい、声が聞きたい
そう思う気持ちはそりゃあ、強い
けどな、今更覚えている事が違ったってのはな
もし、あの言葉が違ったら
もし、あのときの声のトーンが違ったら
もし、あの感情が違うものだとしたら
大切な思い出だからこそ
思い出は思い出のままで
そう考える事も仕方がないこと
遠くなった記憶を思い出しながら話をする
思い出話に花を咲かせて
時折、
それは違う
だとか
あれはああだった
なんて言葉を交わす
真実と違っていたところで、いつもと変わらず話を続ける
昔から、少しずつ時代は進んで今へと繋がっていく
End
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