執念
月を見たい
間近で月の様子を視たい
月がモンスターの世界だという、その言葉の真実を知りたい
いつの頃からか抱いた欲求
地表から月の様子を眺めても
その細かな所までを視る事は出来ない
もう少し月に近づく事ができるなら
月の様子を視ることの出来る機械があるならば
長く心に秘めていた欲求
その欲求をかなえることの出来るかもしれない手段があると
エスタでは月の傍近くまで行くことができると、そう伝え聞いた
山に遮られた先にある国
かの国には様々な進んだ技術が存在すると言う
遙か昔に滅んだ国の技術を継承しているとも伝え聞く
そんな国なら、月の近くへ行くことができると言うのも嘘ではないのかもしれない
それなら………
遠く見える月を見上げる
エスタへと行ってみよう
まだまだ開かれたばかりで、一般人の入国は厳しいと聞いている
きっと今行ったところで、コネを持たない自分には入国すら難しいだろう
“月にはモンスターが住んでいる”
遠い昔に聞いたその言葉通りに“月の涙”が落ちた
なぜモンスターは月に居て
なぜ月から落ちてくるのか
誰に聞いても答えの無かった疑問
目に映るのは蒼く染まる月
その中にモンスターの姿は見えない
“月の中にうごめくモンスターの姿が見える”
その姿はまだ自分の目には見えない
けれど、いつか必ず
決意を固めた数日後、荷物を纏めエスタへと旅だった
遠く空の彼方を覗き込む
肉眼で見ていた頃よりもずっと近く見える月の姿
慣れた操作で映像を拡大し月の表面を覗き見る
モンスターの姿が目に見える訳では無い
だが、月の上で動く影が見える
あれが月に居るモンスターの姿
この地に移住してから数年
まだ宇宙へと行く許可は下りない
だが、月への距離は近づいている
モンスターの姿を確認出来たら
月のモンスターの研究を始めよう
End
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