空言


 
それは少し昔の話

世界名高い、傭兵育成機関“ガーデン”は世界に3つ存在する
1つは、SeeD達の本拠地として名声も高い、バラムガーデン
1つは、ガルバディアによって破壊された、トラビアガーデン
そして最後の1つは、事実上活動停止中のガルバディアガーデン
それぞれのガーデンについて、様々なウワサが飛び交っては居る、が………
それよりも大きなウワサが1つ、誠しめやかに語られていた
曰く、近い内に、ガーデンが1つ増える
出所も知れぬ噂話
スコール達は誰1人疑うことなくそう思っていた

ガーデンの役割はまだ終わってはいない
遠い将来、SeeDの力は必要になる時が来る
―――例え、その時代のSeeDには、敵うことの無い相手だとしても
“魔女”の手から、人々を救うことは出来るはず
ガーデンの必要性を訴えるその言葉に、面と向かって異を唱える者はいなかった
“未来の魔女”が今よりも先の未来に現れることは決定された事実
遠い未来に現れる魔女が“善き魔女”では無いことは、起こってしまった事実によって解っている
その魔女へと対抗する勢力として、未来の時間にガーデンが存在していたという事実は報告されている
ガーデン………SeeDが果たした役割、これから先に果たすことになる役割
様々なコトを考慮し、ガーデンが今までと同じように存在するコトに反対する意見は無かった
“世界”が決めた結論は、とりあえずは今までと同じように
その他の細々とした出来事への決着は当事者同士で………
在る意味なんの面白味も無い結論だった
そうして、戦いの後始末を進める中
バラムガーデンの会議室で、1つの提案がなされた

「ガーデンが増えるという話を聞いたコトはありますか?」
のんびりとしたシドの言葉に、スコール達はそれぞれ肯定の仕草をする
ばかばかしい、ただの噂だ、放っておけばそのうち消える
「あの噂ですけどね」
わざわざそんなくだらないことで呼び出したのかと、スコールが機嫌を悪くした時
「実際そういう話が動いてるみたいなんですよ」
シドがあり得ない言葉を吐き出した
「まさか本気で1つ増やすつもりかっ?」
「確かにガーデンは3つ存在してますが、現在あるガーデンはどれも北の地にあるんです」
ゼルの言葉ににこにこと、食わせ者の笑顔で答える
「それは確かにその通りですけど………」
困惑したキスティス達の表情に気が付かないのか、卓上に現れた世界地図を前にシドは話を進める
―――だから新しく南の方に建てなければならない
そういう主張を広げる一派が存在するという話
確かに、ガーデンという組織が全世界をカバーするためには、必要なことといえるかもしけない
けれど、実際問題として、ガーデンがする必要性は、無い
「ちょっと問題なのは、彼等には悪意は無いというコトでしょうか」
“将来に備えて”という想いに嘘はないらしい
だが………
「世界を自分達の手の上におきたい、という意図がみえなくもないわね」
会議の席上に満ちる、微妙な空気
見交わした視線が、互いが不快感を抱いたことを知らせる
「その通りです」
にこにこと笑顔を浮かべてシドが、地図のある一点を示す
「………彼等の狙いは、エスタにあるようです」
シドの指先はガーデンの建設予定地だろう、エスタ国内を示していた
「どうしますか?」
「どうするかって………」
指先がしめした場所は、エスタシティからもそう遠くはない場所
ここへ建物を建てるにはエスタの承諾が必要
………勝手に建てるにしても、気が付かないはずがない
視線がスコールへと向かっている
「………放っておけばいい」
こんな話をエスタが承諾する訳はない
「………確かにソレが一番かもねー」
但しガーデンの総意だと思われては後々困るコトになりそうなので、エスタに事前に話はつけておく
それだけを決めて、会議は終わった

―――エスタにガーデンが出来る
どこからともなく現れ、大きな噂になっていたソレは、不意に消滅した
一部の者が秘密裏に持ちかけた提案は、公の元で拒絶された

そんな噂があったコトを思い出したのは、スコールの行き先が決まったある日のこと
 

 End