分岐点
分岐点はどこだったのだろう
今となっては随分昔
まだ私も彼も若かった頃
将来の姿など欠片も思い浮かばず
将来の姿に思い悩むこともなかった頃
ただ、漠然と
きっと彼は幸せな結婚をして、賑やかな家庭をつくるのだろう
そう根拠も無く思っていた
あの頃の知り合いは皆そうだろう
誰も、今を予測は出来なかった筈だ
きっかけはいつだっただろう
いつものように軽口を交わして
与えられた任務に挑んだ
普通ならあり得ない任務
体の良い言い訳を付けた、少人数での任務
まだ若かった私達は、それを深く考えなかった
はめられたのだ
そう気が付いた時には遅かった
これから先も楽しく続く筈の人生はその場で唐突に終わりを告げる………ところだった
気が付けば私は病院に居て、彼の姿はそこには無かった
引き返すことの出来ない道へと足を踏み入れたのは
海辺の小さな村
村人全員が知り合いで、よそ者を酷く嫌っていた
あの地に暮らした僅かな期間
相変わらずの彼と
いつのまにか築かれていた関係
あの場所できっと運命が決まった
ただ、あの時はまだ
この片田舎で、家族に囲まれて賑やかに一生を終えるのだろう
そう漠然と思っていた
すべての始まりはいつだっただろう
この国に手を貸した時
子供を救う旅に出た時
あの田舎町に兵士が攻めてきた時
彼がプロポーズをした時
怪我が酷く、彼だけがあの村に残された時
命がけの任務の時
与えられるはずのない任務
気に入らない上官
彼が憧れていた存在
あこがれの相手に緊張する彼をはやし立てたのは私達
あるはずが無いと思っていた出来事
幾つかのタイミングが重なって
知り合いよりも僅かに進んだ関係
………アレがすべての元凶
彼は、あの事について何も思う事は無いのだろう
むしろ、あの任務があったから出会うことがあったのだと、そう思っているかもしれない
だから、私だけがあの時の事を後悔している
あの時、あの行動が無ければ
彼は、彼女と出会うことは無かったかも知れないが
どこかで家族に囲まれて平凡な日々を送っているのではないか
あの時イメージした、賑やかな家庭があったのではないか
そんな後悔の念を抱く
End
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