観測


 
久しぶり、という程でも無い時間をおいて訪れた場所は
やっぱり、相変わらずだった

バラムガーデンに訪れた一番の変化は、様々な人の訪れを認めている事
高い戦闘力を誇るどこにも属すことの無い組織
変わることの無い傭兵という立場
人々との間に認識の差が生じないように、
ガーデンという組織に対する誤解が生じないように
ガーデンは、手続きさえ取れば誰にでも見学する事の出来る機会を与えた
気軽にという訳には行かないが、ガーデンを訪ねることはだいぶ楽になった
お陰で、休日にガーデン見物に訪れる人の数が増えた
だが、平日は―――
学生生活が行われている平日は、見学の許可もなかなか下りない為、訪れる人は少ない
居たとしても、学園上層部へと用事のある者
こんな風に、構内を気楽に歩き回る人物が居ることはほとんど無い
明確な目的を持たずに歩き回る、様に見えるラグナの姿に驚き、目を見張り、慌てたように会釈する幾人もの学生の姿
修復が終わって間もなかった頃と違い校舎に真新しさは無い
だが、印象は依然と変わらない
どこか硬質的な暖かさと、冷たい柔らかさ、根底に流れる緊張感
「やっぱ変わってねーな」
悪いわけじゃないが、居心地が良いとは言えない空間
ま、ここが教えている事、役割を思えばそれも当然なのかもしれないけどな
戦いの場へと赴く者達を育てる場所
戦いの際に緊張感を持たない者は―――
大きな戦いを終え、大幅な組織の作り替えが行われた場所
そう考えれば、印象がたいして変わらないのは確実にまずいよな
最も、俺が始めに見たときも、状況はあんま変わらないけどさ
戦闘訓練施設
その手前でラグナは足を止める
武器を片手に出入りする少年少女の姿
どうも、なぁ
“笑顔”を浮かべる彼等の姿が―――
背後から声がかけられる
振り返った背後に、スコールを初めとした、知り合い達の姿
「勝手にうろつくな」
不機嫌そうなスコールの言葉
「いいじゃねーか、見られて困る様な事じゃねーし」
笑顔で答える
ありのままの姿見ないと意味が無いんだよ

適当に授業を覗いて
セルフィのはなしを聞きながら、学食でお茶をして
スコールの部屋に乱入して
スコールの日常を引っかき回して、岐路につく
バラムガーデンを出るときには、満面の笑みと、疲れた顔の見送り
大騒ぎして、バラムガーデンを離れて………
「それで、どんな感じかな?」
迎えに来たキロスの言葉で、切り替わる
休暇に合わせて、適当な理由をつけてスコールの様子見に来た、という態度から
現在のバラムガーデンの状況を観察するという、役割を果たすべく態度を改める
俺を初めとしたエスタの人間は
ガーデンという組織の必要性に理解を示しても、その中身を信用している訳じゃない
スコールやキスティスといった一部のSeeD達を信頼してはいるが、ガーデンに関わる全ての人間を信じている訳じゃない
「難しいとこだな」
学園の理念にそぐわない教師達は居なくなったと聞いてはいる
「あまりにも変化がなさ過ぎるからな」
けれど、変わることのない気配
変わることのない印象
争いが終わった直後
復興直後
そして今
ずっと変化が無いっていうのは、あらか様に可笑しい
「シド・クレイマー、彼は引き続き学園長を兼任しているんだったな」
淡々としたキロスの言葉に、ラグナは腕を組み、目を閉じる
「彼を含め、ガーデンの動向はもうしばらくの間観察する事にしよう」
ガルバディアガーデンが、劇的な変化を見せた影響で、変わらない様に感じるだけならそれで良い
能力に見合わず、世間ずれしていない子供達の姿が思い浮かぶ
何事も起こらないのならそれで良い
どっちかってゆーと、面倒な事は起きない方がいいんだよな

それはまだバラムガーデンがSeeDに対する今後の扱いを発表する前の話
 

 End