料理を作るっていうのは、それはそれで一つの特殊な技能だと思う 別にナイフや剣の扱い方が上手くても、包丁の扱い方も同様に上手い訳じゃない 手先が幾ら器用だからといっても、料理の手際が上がる訳じゃない ついでに言えばどれだけ良い味覚を持っていたとしても、味付けが上手い訳じゃない アレはアレで特殊な才能 常々そう思ってきて、そう公言してきた ………んだけどよ 香ばしい、なんてのをとっくに通り越した物体 ―――推測するに、肉なんじゃないかと思うが、もしかしたら魚かもしれない 煮詰まるとか、分量を間違えたとか、そういう次元じゃない位にどろどろとした鍋の中身 ―――何を作るつもりだったのかは、推測するのも不可能だ なんだか良く解らない食料の残骸を目にして台所の入り口で、ラグナはがっくりと脱力する 「いったい何をどうすればこうなるんだか………」 こういう状況ってのはさすがに初めて見たぜ ため息を吐くラグナの向こうで、罰が悪そうに目が背けられる 料理の向き不向きで言えば確実に向いていないんだろう けど、まぁそれだけじゃねーよな 料理向いていないだけの話なら、ここまですさまじい惨状にはいくらなんでもならない いくらなんでも、肉――だと思うんだが――が焼け焦げる様な事態となれば、その前に気づき火を消す、位の事はする筈だ なんてったって、注意力は文句なく良いんだからな ってことは、だ 料理と同時に何かをしていたと言うこと 何かに気を取られ―――夢中になって、火を使っている事をすっかり忘れてたんだろう まあ、こうなった事は仕方ないけどよ 「頼むから火事は起こすなよ」 大統領官邸が出火炎上なんて、シャレになんねーぜ 「………気をつける」 さすがに悪いと思ったのか、反論することなく答えが返ってきた ついていたTVに視線を向けて
「今度は失敗しない」
End
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