成り行き
『多分、おじさんの書斎にはあると思うんだけど………』
エルオーネのその言葉がきっかけ
全ては成り行きだった
良くある参考文献として上がっていた一冊の本
多少興味がある程度の代物だったが………
「………………」
目の前に広がるのは雑然とモノが置かれ、本が積み上げられた部屋の様子
窓際に置かれた大きな机への元へ繋がるスペースがかろうじて開けられ、細い道が出来ている
「おじさんに聞かないとわからないと思うよ」
書斎の扉を開いたスコールの背にエルオーネの言葉が掛かる
「ラグナはいつ頃戻ってくるんだ?」
あの中からどうしても必要という訳ではないモノを1つだけ探し出す………なんて事はやるだけ無駄だ
「最近忙しいみたいだから、ちょっと解らないかな」
「………そうか」
それならラグナに時間が出来てからにすればいいな
その時は特に残念に思うことなく、スコールはその場を離れた
それから数日の時間が経過した
エルオーネの言う事は確かに正しいらしく、スコールはラグナの姿を見かけていなかった
スコールの目の前には書斎の扉
用事があるというわけではないが、何となく足が止まる
無意識に手が動き扉を開き
………………
閉めた
垣間見えたのは先日と変わらず雑然とした光景
あるかどうかも解らないモノを探すのに費やす時間は無い
少し書斎の中を気にしながらスコールはその場を離れた
さらに数日後
よほど真面目に仕事をしているのか、ラグナは深夜遅く帰り、早朝出かける生活が続いている
書斎の中でスコールは手近に在った一冊の本を手に取る
タイトルに目を通し、何気なくページをめくったスコールの手が不意に止まる
ゆっくりと目が活字を追い
………………
冒頭から改めて文章を読み始める
夢中で読み進めるうちに、身体は無意識に動いて、窓際に備えられた椅子へと腰を降ろしていた
書斎へと通い始めて3日目、ラグナはよほど忙しいのか戻った気配は無い
入り口で見渡した室内は相変わらず雑然として、何がどこにあるのか見当もつかない
スコールはここで、僅か3日の間に、興味を引かれる様々なモノを見つけていた
僅かに残された通路周辺でこの収穫なら、この部屋全体では………?
別に急ぐ用事がある訳じゃない
スコールの手が側にあったモノへと伸びる
それから数日、時折作業の手を止めながら、スコールは黙々と書斎の整理を続けた
整然と整理された綺麗な室内
別の場所の様に姿を変えた光景に満足をしながら、スコールは途中目をつけていた品々を手に充実した時間を過ごした
End
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