一睡り
「………何やってんだ?」
扉を開けたとたん、眼に飛び込んで来た光景に思わず言葉が零れる
「………見ての通り、かなぁ?」
扉から正面のソファーの上にただ横たわるエルオーネの姿がある
………見ての通り?
具合が悪そうな様子は無いし、何かしていた様な様子も無い
なら
「怪我でもしたのか?」
首をひねりながら問いかけるスコールの顔をじっと見つめ
「そんな大げさな事じゃないんだけどなぁ」
言葉と共に苦笑を漏らした
「気持ち良いよ」
エルオーネからかけられる幾度目かの誘いの言葉
「………………………」
窓の外から差し込む日差しが心地良い
それは確かに、体感している事実ではあるけれど
「たまにはのんびりしたら?」
いつもよりものんびりとした口調がなおもスコールを誘う
「別に、今絶対にしなきゃならない事って訳じゃないんでしょ?」
スコールの心の内の葛藤をちゃんと知っているかのように続けられる誘いの言葉
「スコール?」
呼びかけに仕方なく視線を上げると、にこにこと楽しそうにエルオーネは笑っていた
「ただいまぁ〜」
背後で扉が開く音がする
向い側のソファーで、エルオーネが小さく手を振る
室内へと足を踏み込んで辺りを見回す気配がする
「なんだ2人して、疲れてるのか?」
ソファーの上に寝そべる2人の様子に軽い言葉を残して、ラグナは部屋を横切っていく
「んー、ただなんとなくぼーっとしてたい気分かなぁ」
いつもよりも間延びしたエルオーネの言葉が聞こえる
スコールは半覚醒のまま、少し硬いソファーの感触に身を預けている
「いい天気だもんなぁ」
少し遠い場所から楽しげな笑い声が聞こえる
「んじゃあ、俺も一眠りするかなぁ」
すぐ側を通り過ぎる人の気配
数度小さな音がして、それから続く静寂
ふんわりと暖かい空気が身体を包む
微かに残っていた意識が、ゆっくりと沈んでいく
ほどよい暖かさに、なんとなく気がそがれて何もしたく無くなる
今日はそんな一日
End
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