押し黙ったまま、考えを巡らせている姿をじっと目にする ほんの少し前まで流れる様に話していた姿は影を潜めた 微かに動く右手の指先が、一定のリズムで机を打つ 『迷った時とか、考え事をしている時は逆におしゃべりになるみたいね』 知ったフリでそう言った声が蘇る ゼンゼン違うじゃねーか 今俺が見ているこの姿こそが、考え事をしている時の態度だ 彼奴等が知らずに居ることを先に知った事にほんの少し優越感が生まれる 帰ったら彼奴等にも話してやろうか、 いや、簡単に教えるのはもったいない……… てな事を考えていたが そういや……… くだんの言葉を聞いた時のアイツの態度を思い出した 何か言いたいことがあるっていう態度 納得出来ないって言った例の態度だ 思わず舌打ちしそうになる あいつ、解っていやがったな いつもの様に不機嫌な気分になると同時に、机を打つ指先が止まった 「ああ、わりぃ、ちょっとぼーっとしてたな」 軽い調子でそう断ると、目の前の彼は先程の様子が嘘のように再び流れる様に話を始める 別に深い考えがある様には思えない会話 言いたいことだけ、思いついた事だけを言っているかの様な話 言葉を交わしながら、ソレがただの錯覚だと言うことに気づかされる ………言質はとらせねぇし、確信には触れねぇな こっちが聞きたいと思っている言葉は全然言う気配がねぇ 上手く誘導した筈の話題は、それ以上に上手い具合にかわされる 彼奴等の言うことはことごとく当てにならねぇな 事前に聞かされた人となり 彼奴等の話ではこれほど手強い相手じゃ無かった ………そういや、ものすごく微妙な顔をしていたか 別の理由からかと思っていたが、どうやら彼奴等のあまりにかけ離れた人物像に呆れかえっていたってところか? 面白くない記憶を思い出している間も、こっちの身にならない会話は続いていた様だ 申し訳なさそうに、時間を告げる声が聞こえる 「っと、わりぃな、返事は今度改めてするからよ」 そう言い置くと、ラグナは慌ただしく退席していった 通りかがった廊下で、何事かを訴える声が聞こえる
饒舌とは言い難いスコールの言葉が聞こえる
End
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