| 
片づけの後で
 
  
 
 エスタ大統領私邸の2階
 主に私室が存在する場所
 見覚えがない程綺麗に片づいた書斎でラグナとエルオーネは1冊の本を探していた
「やっぱ、スコールに聞かないと解らないと思うぜ」
 いくら綺麗に片づいたとはいえ、ここまで量が多くなるとそう簡単に探し出すのはどう考えても無理だ
 「ちゃんと分類別に整理してあるみたいだし………」
 背表紙を指で辿りながらエルオーネが首を傾げる
 「でも、無いんだよな?」
 ある筈だって言う場所にエルが探しているって言う本は無い
 似たような所やまだ積み上げられたままの辺りも見てみたがその辺りにも無い
 実は持っていない奴だったって事も無いしなぁ
 エルは以前ここで見たって言うし、ラグナ自身にもその辺りに置いておいた覚えがある
 「………仕方ないなぁ」
 ため息と共に、エルオーネが背表紙から手を離す
 「スコールに連絡してくるから」
 「ん、もう少し探しておく」
 気が進まないと言ったふうのエルの背中に、ラグナは苦笑しながら声をかける
 確かにバラムガーデンに連絡を取るのは、少しばかり手間がかかるし面倒だ
 それにくわえてエルの場合だと、どうもスコールに繋がる前に他の奴等が通信に割り込んで来る事があるらしい
 ま、緊急事態って訳じゃないが、それなりに急ぎの用事の時は勘弁してくれって思うよな
 「………さて、と………」
 ラグナは腕組みをして、整然と並んだ書籍を見つめる
 「書庫に置いてきた覚えはねぇーし、スコールは書庫の場所知らねぇみたいだし」
 別に秘密にしている訳でも、隠し部屋になってる訳でもないが、分かり難い場所にあるせいかまだ気づいていないらしい
 「となると、ここにある筈だって事になるが………」
 ラグナ自身はざっと、エルオーネはじっくりと探した場所にはどう見ても無かった
 「エルが言うみてぇに、他の所にしまったってのはあんま考えらんねぇんだよな」
 スコールの性格上“適当に”ってのは考えられない
 判断出来なかったとしたら、隅に積んである奴等の仲間入りをしているはずだ
 「………ってことは、やっぱりここには無いって事だ」
 だと考えられる事は“スコールが持ち出した”ってあたりだよなぁ
 ラグナは一つ一つ確認する様に考えながら、書斎を出、スコールの部屋へと足を向ける
 「借りていくって話は聞いてねぇし」
 バラムまで持って行くつもりなら、絶対断りを入れるよな
 「だとするとここにあると思うんだけどな」
 ラグナはスコールの部屋の扉を開ける
 「当たりってとこか?」
 比較的片づいた部屋のベッドの上に数冊の本が投げ出されていた
 「スコールは居ないっていうし、どうなる事かと思ったけど、見つかって良かった………って言うべき?」
 複雑な表情でエルオーネは、手渡された本へと視線を落とす
 「とりあえずそれでいいんじゃねーか?」
 スコールの部屋から回収した本を読みながら応えるラグナの姿にエルオーネはため息を一つ
 「………それじゃあ、そう言うことにしておく」
 仕方なく言った言葉に、気のない声が一声返された
  
  End 
  |