未来〜SeeD〜
SeeDは戦いのプロだ
依頼一つで、現場に赴く
SeeD個人に仕事を選択する権利はない
仕事を受ける受けないを決定するのは、ガーデンの上層部で
かつては、学園長だった
どちらにしろ、仕事をこなすSeeD達には、仕事を選択する権利は無い
依頼を受ける、受けないを決定する権利もむろん無い
ただ、与えられた仕事を
ただ、指示に従いこなす
SeeDとはそういう者
そうあるべきだと教育され
そういった者のみがSeeDになった
それは決定していた未来に向けての布石
戦う相手が誰であろうと、躊躇わない様にと打たれた布石
―――今は、必要が無くなった筈の仕組み
「未来に備えてSeeDを無くす訳には行かないわ」
いつか必ず生まれる筈の未来の魔女
最後の魔女となる彼女と戦うことになるSeeD達
そこに到る道筋を私達は知ることは出来ないけれど、遠い未来で、彼等が存在し、魔女に戦いを挑んだ事を私達は知っている
その遠い未来の魔女は、過去の私達が倒す事になるけれど
あの時代にSeeDが居たのは事実
私達の過去につながる未来を変えてはいけない筈よ
“魔女”のおかげで、ガルバディアの兵力は疲弊した
戦争を仕掛ける余力は無くなり
“魔女”が居なくなったエスタは平和主義の国に戻った
世界から大きな争い――戦争――は消えた
平和な世界が訪れるのは喜ばしい事
それは当たり前の事実だけれど………
ある意味SeeDは戦う為の者達
ガーデンは、戦う者を養成する為の機関
争いが無くなれば、役割は減る
必要とされる時が無くなる
必要でなくなってしまえば、組織は消えていく
それはこの世の理ではあるけれど
私達SeeDは“魔女”と戦う事を目的に生まれた
魔女が存在する限り、SeeDが無くなってはいけない
遠い未来、生まれてくる“悪しき魔女”へと繋がっている限り
「ガーデンを存続させることと、SeeDを未来へ繋げる事は私達に課せられた義務よ」
SeeDの本当の目的が存在する限り、“今”必要とされなくなったとしても、無くすわけにはいかない
「けれど………」
SeeDにつけられた枷
呪文の様に繰り返された言葉
“SeeDは何故と問うことなかれ”
「SeeDの性質と体制は変えても良いと思うわ」
あれは私達に向けられた錘
そして、SeeDに仕事を選ぶ権利が無いことも
ママ先生と戦うことになるかもしれない私達への枷
「もちろん、依頼の内容に沿ったランクは明示する必要はあるでしょうけれど」
実力さえ伴っていれば、自分の意志で自分がやるべき事を選択する
そう変わってかまわない………
いいえ、そうなるべきだわ
「それと請け負う仕事の内容も見直す必要があるわ」
今までの基準なんて、在って無いようなもの
明確な基準と、決して請け負うことの出来ない依頼
―――例えばそう、暗殺なんて仕事
SeeDの存続の為にも仕事の内容は選ぶべきだわ
「すぐに、は無理でしょうけど、なるべく早い内に実行するべきね」
語られた結論に、反対の声は上がらなかった
時が過ぎて
相変わらずガーデンとSeeDは存在している
戦いに身を置くことが多い事に変わりはない
けれど、その他の仕事も様々に増えた
ガーデンに属するSeeDも変わった
年齢制限が緩和され、ガーデン生である必要が無くなった
最後に残されたのは、『SeeDは“悪しき魔女”を倒す』ということだけ
遠い未来、垣間見ただけのSeeD達
未来のSeeDの事を私は知らない
ただ………
幾人か、白い制服を着たSeeD達が通り過ぎる
私達が身にまとった黒い制服と
“あの時”に見た白い制服
白と黒、2つのSeeDがどんな運命をたどるのかは私は知らない
知らないけれど………
白いSeeDを提案したときの友人達の表情がはっきりと思い浮かぶ
―――これは未来への布石
そう言い切った、まだ幼い自分
でも、過去と未来がつながる事
結末を変えない為に必要な事だと、今でもそう思っている
扉が開く
幾年も通った室内
ここに来るのも今日でお終い
これから先、ガーデンとSeeDがどんな道を歩くのか、私は知らない
ただ―――
貴方達の先行きが明るく在ることを
End
|