スタイル


 
空の上から見下ろす街並み
見慣れた光景
見慣れない光景
良く知った場所が、違う物に見える
………ほんの少し角度が変わっただけで

静まりかえった会議室で、幾つかの案件が処理される
時折、誰かが発する意見がぽつりと聞こえる
活発な意見は交わされない
あくまでも静かに、慎重に
それぞれの言葉を熟考して、それから一人ずつ慎重に意見を発する
長い時間をかけて、案件が処理される
「それではこの件は棄却とします」
数拍の間が開いた後に、承諾の言葉が幾つも上がった

うるさい程賑やかな会議室で、1つの案件が議論されている。
声と声が重なりあって述べられる意見は正直な所、分かり難い
活発過ぎる程活発に意見が交わされる
賑やかに、正面から議論を叩き合わせ
誰かが述べる意見に誰かの反論が重なる
とにかく意見を整理して、長い時間の末に案件に結論がつけられる
「それじゃあ、この件は却下だ」
とたんに幾つかの不満の声と賛同の声が交じり合う
………いい加減にしてくれ
疲れたように呟いた言葉は、騒ぎに紛れた

執務室
賑やかにけれど的確に仕事が動いている
「………の件ですが………」
提示された書類を覗き込みながら、話をし、気が付くと話がわき道に逸れていく
誰かの注意する声に、話が軌道修正されて、その内再び脱線する
いつもの光景に、話に耳を傾け、つっこみを入れる彼等の仕事をする手は止まらない
やがて話を終えて、再び手が動き出す
退屈そうにときおり外へと視線を向けながら………
後どれくらい持つか?
ひそかに、いつもの賭が始まった

司令室
静寂のままに書類が処理されていく
「………の件なんだけれど………」
提示された書類にちらりと視線を向け、一言二言、簡潔な答が返る
さらに問われた質問に、再び一言の返答
無駄話は一切しない
水を向けた雑談にもかえってくるのは生返事
いつもの面白味の無い光景に肩を竦めて再び仕事へと戻る
しばらくの間キィを叩く音と書類を捲る音だけが響く
やがて響くノックの音
賑やかな声と共に、数人の人影が部屋の中へ滑り込んできた

「あんたんとこは賑やかだな」
たまたま執務室を訪れたスコールが呆れた様に言う
「なんだー?会話位ないのかよ?」
たまたま司令室へと通されたラグナが驚いたように目を見張る
部外者が立ち入ることの出来ない場所での様子を見れば、その言葉はきっと訂正される
 

 End