新製品


 
廊下へと通じる一部を残し壁一面がガラスに覆われた、やりすぎだろうという程開放的な室内
中央に置かれた机の上には幾つかの品物が置かれている
この場所に来てから既に1時間余り
一つ一つの品物に対する丁寧な説明が続けられている
時折なされる質問
周りで交わされる遣り取りをラグナは黙ったまま聞いている
「こちらの品物は………」
視線が細い指が取り上げた品物へと一瞬向けられ
そしてまた机の上へと彷徨う
ぼんやりと見る視線の先には、気持ちよい程の青空が広がっている
熱の入った説明が耳を通り過ぎていく
微かに動かした視線の先に、同じように退屈そうなキロスの姿が見える
いい加減そろそろ終わって欲しいよな
確かに、説明を聞いているのは厭きてきたな
視線だけで会話を交わす
現状に飽き飽きしているのはキロスも同じらしい
じゃあさ、そろそろ結論でも良いんじゃないか?
ラグナの視線が自分の周りをそっと見渡す
………うんざりしてるって顔が多いぜ?
確かに、その通りだな
ならさ………
だが、ソレは君の仕事じゃないかな?
俺が言うのは拙いんじゃないか?
時間が押しているとか何とか周りが言ってくれた方が穏便に済むだろ
視線だけで続ける熱心な会話に、何人かが、そっと視線を向ける
「………………」
視線が絡まり合う
縋るような視線がラグナへ、そしてキロスへと向けられる
ラグナ小さく頬を掻き
キロスは小さく肩を竦める
どうする?
こっそりと問いかけの視線が行き交う
―――でも、そろそろ終わりそうですよ?
声には出されない言葉に、ラグナ達の視線は机の上へと向けられる
細い手が最後の一つを取り上げる
トンベリの顔を被ったチョコボのぬいぐるみだ
始められる説明の声とは別に、なんとも言えない表情が広がる
机の上に並べられた“新商品”の数々はどれもこれも何かが可笑しい
再びラグナへと視線が集まってくる
………………確かに、こんなもの出されても売れるとは思えないんだけどな
縋るような視線に意を決してラグは口を開く
「なぁ、あんた達本気でコレを売るつもりなのか?」
しんと静まりかえった室内に、日差しだけが暖かに降り注いだ

「暴走するってのは恐ろしい事だよな」
チョコボパークで売り出すという新商品
今までに無いものをと考えて行った結果が、あのおかしな商品の数々らしい
『やっぱり身内だけで考えてるとこういう事が起きるんですよね』
力なく笑ったその言葉が印象に残っている
「それだけではすまされないような気がするがね」
やっている内に歯止めが利かなくなった
内々でしていた事だから、誰も可笑しいんじゃないかと思わなくなった
それが彼女たちの言い分
「けどさ、誰も作らなかった物ってヤツは作っても仕方が無い物って事が多いよな」
必要とされなかったから作られない
作られないから存在しない
「たまに本当に“新しい物”も存在するな」
「でも、アレは違うからなぁ」
“新商品”になり損ねた幾つかのグッズ
机の片隅に鎮座するソレに無言で頷く幾人かの姿があった
 
 

 End