その行方


 
有名になれば―――それなりの地位につけば―――あちこちから“贈り物”というヤツが届けられる
その内訳は
そもそも自分の所まで届かないモノ
どうしようもないモノ
どうでも良いモノ
勝手に消費されるモノ
そして稀に、面白そうなモノ
なんて所だ
送られるモノの中には売り込みを兼ねた新製品、なんてモノも含まれる
当然ソレにも当たりはずれがあって
まぁ、市場に出回ったのか出回らなかったのかさえも解らないうちに消えていくような代物だって存在する
………むしろ、そんなモノの方が贈り物として紛れ込んでくる率は高い
そんな事を何度も、何年も繰り返していれば
大抵どこも似たような結論に陥る筈だ
つまり………
知り合いからのモノ
それと専門の所で厳選された品物のみを受け取る
全てを受け取る、なんて面倒な事はしないって事だ
実情を見れば納得する事だろうと思うんだが
贈り主ってヤツはそうは思ってはくれない
新製品を紛れ込ませる所は特にそうだ
感想を求められても答えようがない
そもそもソレが何なのかすら解らない
いつの間にか脱線した話は、商品の売り込みに変わっている
幾人かが口をはさみ、話を止めさせようとしているが、どうにも成功していない
話を聞いてやれるほど暇じゃないんだけどな
ため息と共に
「………悪いが………」
時計を見つめながらラグナは、覚えてもいない商品の説明を打ち切った

強引に話に入り込んで、はた迷惑な売り込みを撃退した男がまくし立てる
「だから、簡潔に解りやすく話をしたら聞いてやるって」
ありがたくもないが長年の付き合いで、適当にあしらいながらラグナは足早に廊下を歩く
「それは、この間やったでおじゃる」
「説明された覚えも無いし、大体そんな事やってるなんて初耳だぞ」
新しい研究―――実験―――に関する話
この手の話も方々からの売り込みで似たような状況だ
とりあえず専門家に優先度や有用性を分析して貰って
その結果優先度の高いモノから順にこっちに資料を回して貰う
「そんな筈はないのでおじゃる!」
オダインの研究は稀に役に立つモノがあるが基本的にはどうにもならないものばかりだ
こっちに回ってくる率もそれなりに低い
「知らないモノは知らねーんだから………」
「―――次はすごい物を発明してみせるでおじゃる!」
オダインの捨て台詞を聞きながら、ラグナは会議室の扉を閉めた

“贈り物”も“意見書”も、大統領宛に送られる全ては本人の手元まで届くとは限らない
それは安全の為であり………
よけいな負担を減らす為である

そんな一文が公式に発表される日も近いかもしれない

 End