基本的な事
振り下ろされる鋼の輝き
僅かな時を置いて聞こえる音
剣が振り上げられ、一瞬のうちに振り下ろされ
そして突き上げられる
扉を開けると同時に目の前で繰り広げられた動きに目が惹かれる
引き寄せられるように足を1歩踏み出す
踏み出した右足が小さな音を立てた
高い音を立てて刃が打ち合わされる
「なんだか、折れそうだな」
なんとなく呟いた言葉に、隣から同意の意志が返ってくる
斬る為の刃は鋭くそれなりの強度はあるが
打つ為の刃ほど厚く硬くは無い
打ち合わされる鋼の刃はよーく見れば欠けている様にもみえる
『そろそろ止めた方が良いんじゃないか?』
だよな、そう思うよな
「………まぁ、もう少し待ってみるか」
『ソレでいいなら、良いんじゃないか』
「これも勉強の一つってことでさ」
『安物の武器は壊れやすいか?』
「いや、ソレもあるけど、違うだろ」
にやにやと面白がるような笑みは、いろんな事を解っていての発言だ
とりあえず正解の一つは
斬る為の武器を武器を叩く為の攻撃に使うなっていうこと
勢いよく振り下ろした動きに僅かに身体が流れる
いつもよりも軽い武器
いつもと同じ力をかければどうしたって動きは不自然になる
勝手が違い、思い通りにならない状況に見え隠れする苛立ち
「やっぱ専用の武器ばっかり使ってると弊害ってのが出るもんだな」
隣で微かに肩をすくめる気配がする
打ち合わされた刃から小さな火花が散った
手合わせをしていた2人の間に距離が出来る
「………壊れるな」
向こう側で、剣を指さしながら何事かを告げている
そうして、鋼が小さな音を立てた
―――たまには違うモノを使って見ても面白いかも知れない
そんな誘いに乗って一本の剣を手にした
曰く
その辺りの武器屋で売っているなんの変哲も無いただの剣
間近で見た物質は確かにその通りで、素人用の剣である事は間違いない
そんなモノがココにある事が可笑しい気はしたが、何となく興味を引かれて剣を構えた
「戦いというのはいつどんな状況で起きるか解らないものだ」
笑いながら告げられた言葉に、ため息が零れた
End
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