「………気持ちわりぃ」 どうにか戻ってきた自宅 ソファーへと崩れ落ちる 「大丈夫?」 呆れた声が顔を覗き込む 「ああ………あんま大丈夫じゃねぇかも」 吐き気がする 水を入れたコップが差し出される 手を伸ばし受け取ったものの 口に運ぶ気力が無い 「飲めないことは解ってるんだから、自分でセーブしないとダメじゃない」 「そーなんだけどなぁ」 それはわかっちゃいる わかっちゃいるが、いつの間にか飲みすぎてる 「………おじさんが弱すぎるってのもあるんだけどね」 頭上でため息を付かれる 「そればっかりは、どーしよーもねーなぁ」 長年変えられなかった体質はいまさら変えられるわけがない 昔よりは多少は強くなった気もするが、気のせいかもしんねぇしな 「おじさんの分だけ、ジュースにでもしてもらえばいいのにね」 エルオーネの言葉に、 「あーーそれもやった事があるんだけどな」 席が決まっていて、一歩も動かないような場所なら問題は無い けど、今日の様に立食形式じゃあそう上手く事は運ばない 人は入れ替わり立ち替わり 自分が居る場所も変わる 飲み物も、わざわざそこまで探しに行くわけにもいかねぇしな 「それに、いい加減おじさんがお酒に弱いってことは知れ渡ってるんじゃないの?」 「エスタだったらな」 長年過ごしているエスタなら、顔を合わせる相手の大半は酒が弱いことを知っている だが、他国の奴らはな……… 「他の国の人、来てたんだ」 少し吐き気が収まり、身体を起こす 手にしたままの水を口に含む 「ああ、いろんなとこが来てたぜ」 この機会にエスタと繋がりを付けようって国や組織は多い その目的は千差万別だけどな 「そっか………」 空になったコップに水が注がれる 「薬も要る?」 「いや、そこまではいらない」 完全に身体を起こす 「ま、大して続くわけじゃないからな」 エスタは他の国よりもパーティや晩餐会といった行事が少ない 「しょっちゅう、こんな風になるんだったら、抗議しないとね」 「あ、それはいいな」 笑いながらの言葉に、同じように笑って応じる 「もう、大丈夫そうね」 「あ?ああ、そうだな、大分楽だな」 吐き気は大分収まってきた 「そう、無理はしないでね」 「ああ、悪いな」 念のためと置いていかれた薬を手にもう一度横になる もう少し休むか 「やっぱり………」
End
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