将来3
「別に焦る必要なんてないだろ?」
何の話をしていたんだったか、話が途切れた折、エルオーネが話し出したスコールとの会話
エルオーネやスコールくらいの年頃なら、誰だって知らない事が沢山ある
ただ、特殊な環境にいたせいでその範囲が他と少しずれているってだけの話
「まだまだ時間はたっぷりあるんだ、慌てずゆっくり考えれば良いんだ」
「まだまだって、そんなに時間は無いと思うけどね」
エルオーネの言葉に自然に笑みがこぼれる
「いや、まだまだこれからだよなぁ?」
俺の言葉にキロスとウォードが頷いた
「将来の事か」
「あの位の頃、君は何をしていたんだったかな?」
キロスの質問に俺は肩を竦める
「何してたんだろうなぁ」
夢とか、希望とか
やりたいと思っていた事とか
将来の事、とか
「いろいろ考えてはいたんだけどな」
あの頃はあの頃なりにそれなりに真剣だった
「子供だからな」
『ガキの考える事なんてのはたかが知れてる』
子供の頃の夢
将来の事
何をしたいと思っていたのか
………なぜ、軍に入隊したのか
「単純だったよなぁ」
新人兵士達の四方山話の数々
「ラグナ君の様な理由は珍しかったと思ったが?」
「いろんな所に行ってみたいから、か?」
あの当時も友人達に呆れられた理由に笑いが零れる
「あの頃はあの頃で真剣に考えた結果だったんだけどなぁ」
ほんの少しだけ理由をつけて、結局の所は大半の奴等と同じ、金になるから
『おかげでいろんな場所に行くことになった』
「ちっと、違う気もするけどな」
軍に所属している間にも様々な所に行った
その後も、結局は世界のほとんどを回る事になった
「だが、知識が必要というのは賛成だな」
『知っていれば、様々に道が開ける』
知らなかったから起こったこと
知っていれば選ばなかったかもしれない道
残念な事に、心当たりは山のようにある
「そうだよな」
知っていて悪いことなんてのは何も無い
「様々な事を知って、ゆっくり悩むべきだろう」
『ここはエスタだしな』
「いろんな事を知るには丁度良いよな………ちっとずれてるかもしんねぇーけど」
俺の言葉に笑いが零れる
「事実ではあるな、確かに」
『エスタは特殊だからな』
「でもまぁ、一般知識なら、大して変わらないけどな」
知りたい事
知らなければならない事
自分達に足りないと思っている知識の数々は、ゆっくり身につければ良い
まだ時間はある
「あんまり早く将来を決められても困るんだよな」
まだ、もう少しだけ一緒にいるだけの時間が欲しい
End
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