ささやかな疑問
―――食事について―――


 
「そういえば、食事ってどうしてたの?」
おじさんと暮らし始めて少しした頃
夕食の支度をしながら、ふと気になった事
当然の様に、私が家事をしているけれど、ついこの間まではそんな人も居なかった、はず
誰かしてくれる人が居たとしたら、その人が来てくれる筈だから、間違ってはいないと思うけど
「どうって、そりゃ適当に………」
「適当にって?」
「そう聞かれてもなぁ」
そう言っておじさんは困った顔をした

食事ってのは大事だ
生きてる限り食べなけりゃ生きてはいけない
どうせ食べるなら、安全で美味しい物が良い
“大統領”なんていう面倒な仕事を引き受けた結果
食事に関しても少しばかり面倒な事になった
「幸い、料理は出来るな」
「そりゃ、今までもやってたしな」
『面倒くさいがな』
旅の途中では、似たような事はしていた
その数年前までは、料理や家事は自分達でやっていた
「交代でやれば面倒は少ないよな」
「手が空いた者が、とするべきだろう」
食事の際の危険性
食事を用意する者が味方だとは限らない
食事を運ぶものに悪意が無いとは限らない
屋敷内に入り込んだ者が買収されないとは限りない
“権力者”に対してあり得るだろう事態
どっかで聞いた事はあるが、まさか自分に―――自分達に降りかかってくるとは思わなかった
「めんどうな事はとっとと終わらせて帰ろうぜ」
ラグナの言葉に、2人が力強く頷いた

「初めのうちは3人で交代してつくってたんだけどな、時間がたつとそれも段々面倒になってきてさ」
「おじさんって料理もできたんだ」
ずっと昔、レインの手伝いを一緒にしていた覚えはある
けど、おじさんが料理を作ったって記憶は無い
「軍にいた頃から、自分達で作ってたからな」
あそこ、食堂とかなかったからさ
笑いながら告げる言葉に、なんとなく不思議な気がする
「そうなんだ」
レインは、知っていたのかな?
ふと、そんな事を考えた
 
 
 

 End