おとぎ話
広大なエスタ砂漠
その砂漠のどこかに古い都市が埋まっている
エスタでは良くある伝説の一つ
そんな話は、国内の様々な所にあって
他にも湖に沈んだ都市の話とか
森の奥深くに眠る遺跡の話とか
場所も物も様々に伝えられている
昔から伝わるそれらの話は、エスタの人々は本気にはしていない
時折思い出したように囁かれるそれらの“伝説”は
ただの想像
子供だましのおとぎ話
いつもの様に僅かな期間人の口に上って
すぐに消えていく、はずだった
「砂漠の調査?」
幾つもの書類の中、紛れ込んでいたのは1通の嘆願書
エスタ国内での調査の申し出
他の国とはいろいろな面で違う所が在るエスタには、特殊な環境に興味を覚えた他国の学者達から調査の申し出が幾つか届く
面倒事を避ける為、差し障りの無い程度に調査の許可は出している、が
「砂漠ってのは、なぁ」
エスタの広大な土地
その広大な土地の中でも、砂漠が占める面積は少なくはない
ラグナの手から書類が抜き取られる
「………確かに、砂漠全域の調査を許可する訳にはいかんな」
内容に目を通し、キロスが秘書達へと視線を向ける
「許可を出す、出さないは別にしても、もう少し範囲を狭めてもらわねぇとな」
キロスの手が、書類に“不許可”の印を入れた
………それが一年前の事
「………エスタ砂漠の中心部か」
回されてきた書類は、発掘調査の許可申請
場所はエスタ砂漠の中心地
「位置的には良い場所と言えなくもないな」
「この辺りの調査は?」
「発掘調査はしていませんが一通りは」
掘り返してはいないが、調査済
何かあったとしても、掘り返して調査する迄も無いということ
「………どこだ?」
ラグナの言葉に情報が呼び出される
調査を行った組織、調査結果
「まぁ、問題ねぇだろうな」
おかしなものが発掘される危険性は少ない
「………後は期間の問題のようだな」
キロスが書類を指で弾いた
発掘調査の許可が降りた
かつて砂漠にあった都市
伝え聞いた伝説をエスタの人々は信じていなかった
だが伝説が生まれるには何らかの根拠があるはずだ
発掘の期間は僅か2ヶ月
ただし、この2ヶ月の間に何らかの成果が得られれば期間の延長が認められる
「手がかりを見つけなければ」
決意を秘めて声が風に流された
End
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