ループ
時間が足りなかったとか
突然呼ばれたとか
まぁ、理由をつけるならつけられないことはない
だが、実際は別に大した理由がある訳じゃない
“とりあえず”
そんなことさえも考えていない、無意識の行動
その結果が今の現状で
つい1ヶ月程度前にも、似たような状況で
“とりあえず簡単に”
対処をした
それが今は既に、
“本格的に”
やる前に、前と同じ状況だ
「そろそろいい加減時間をとらねぇとなぁ」
時間が余っている訳じゃないが、以前よりは随分時間が出来た
1日丸ごと時間を使っても、困る事はもう無い
足元に散らばった本を拾い上げる
棚の隙間に押し込めながら
「なによりいい加減、怒られそうだしなぁ」
笑みがこぼれた
人の気配に顔を上げる
部屋に入ってきたエルオーネが、窓を開ける
気持ち良い風が入るのと同時に、弱まった日差しに空調が止まっていた事に気が付く
「気温もだいぶ落ちついて来たね」
「そうだな」
僅かに生じた沈黙に、スコールは辺りへと目を向ける
「………ラグナは?」
スコールの問いかけにエルオーネの指が、斜め上を指し示し
「上手く行ってれば地下かもね」
言葉と同時に翻った指が足元を指さした
両手に本を抱えて、部屋の中を歩く
時折立ち止まって、本を入れ替える
抱え上げた本を確認して、“とりあえず”戸口近くへと積み上げる
腕を休ませる為に少し休憩
休憩のついでに近くの本を手に取ろうとして………
「って、読んでる場合じゃねーよな」
慌てて手を引っ込める
………………
なんとなく、間が持たなくて、休憩もそこそこに再び動き出す
本を手にとってタイトルを確認して、目的の棚へと移動する
「………………」
同じタイトルの本がもう一冊
「“とりあえず”ここ置いとくか」
1冊は、後で処分しないとな
机の上へ1冊を置く
そうして、両手に本を抱えて―――
同じ作業が幾度と無く繰り返された
微かな音と共に、小さく扉を開く
「………………」
隙間から見えた光景にため息が零れる
中途半端に片づいた棚と、本が散乱した床
「今日中には終わりそうもないな」
スコールの言葉に
「こうなる気はしてたけどね」
エルオーネがしみじみと呟いた
End
|