職業適性


 
隠れていた気配を感じる
微かな動揺は何者かの気配
動揺するってことは、こっちの事を知っているということ
………………
消えたままの気配
問いかけや呼びかけの声も掛からない
歓迎出来ない相手か
気配が現れ、消えた場所を意識しながら、何事も無かった様に歩き出す
………たいした相手じゃねーな
注意を向ければ微かな気配を感じる
たいした実力はなさそうだ
ま、忘れなければ大丈夫だろう
立ち止まったのは、一呼吸分程度
気がついた事を気取られぬよう、変わらぬ歩調で歩き出した

「おわりっ」
最近じゃ良くある、モンスター討伐の仕事
あんまたいした事ない戦闘
モンスターにとどめさして
いつも通りの勝利のポーズ
決め台詞といつもの遣り取り
………の前に、言葉の前に不自然な間が開く
後ろから感じる視線
上手く隠そうとしてるけど、隠せてない誰かの気配
気づいた?
一瞬交わる視線
気づかなかったふりをながら、いつもと変わらない会話を続ける
………………
………………
賑やかに話しながら
不自然にならない程度の無言
これなら放置してもよさそう
たぶん思った事は一緒
後ろの気配に少しだけ気を配りながら、いつもと同じ早さで歩いた

「同じ様な報告は聞いてるわ」
“仕事”を終えた―――もしくは仕事中のSeeD達が感じる気配の話
「何かのアクションが在る訳じゃないようだけれど………」
邪魔をする訳でもない
接触する訳でもない
ただ、現れて消えるだけ
「けどさ、あんまり放っておくのも賛成出来ないな」
「今、は良くても後々困る事になるかもしれねぇぜ」
「そう、なのよね」
彼等の言葉にキスティスが考えるような仕草を見せる
「とりあえずさ、次に会ったら捕まえてみたらいいんじゃない?」
「後ろめたい事があるのなら、それなりの反応があると思うぜ」
幾つかの顔が同意する様に頷く
「支障が出てからでは遅いのは確かね」
次に出会ったら捕まえる事
そう結論が決まった

気配を感じる
列車を降りてからずっとつけてくる気配
敵意は感じない
戦いに慣れた様子は無い
向けられた感情は、最近よく感じる―――好奇心
スコールは背後を確認し、足を止める
上手く隠れたつもりらしい相手は、どこかで見たことのある人物
「………何の用だ?」
問いかけの言葉に、時間をおいて姿が現れた

―――SeeD特集―――
雑誌の表紙に踊る文字
「………悪い事は書いてはいないみたいね」
ため息と共に呟かれたキスティスの言葉に、幾つもの手が雑誌へと伸びる
「………視線の正体ってコレ?」
「の、わりには素人ってカンジじゃなかったよな?」
「昔軍人だった、そうよ」
「へー、そういうヤツって多いのかな?」
ゼフェルの呟きは聞き流され、楽しげな遣り取りが、しばらくの間会議室に響き渡っていた
 
 

 End