補足知識


 
「元々各国の言葉はセントラの言葉が元になったって言われてるからな」
「確かにガルバディアの言葉もエスタの言葉も似てるけど」
全く同じではないけれど、似ている言葉
だから、言葉を習う時にそれほどまでは不自由はしなかった
「セントラの文字は元が同じって感じはしないのよね」
エスタで使われている文字もガルバディアやバラムで使われている文字と少し違う
けれど、セントラの文字はガルバディアやバラム文字とはまるで違って、その上エスタの文字とも違う形
「遺跡に残されている文字は日常使われていた文字とは違うんじゃねーかって話だからなぁ」
「儀式用の特殊文字とか?」
「良く知らねーが、そんなもんじゃねーか?」
のほほんと交わされる会話
「………それで?」
脱線しそうな会話に声をかければ
「ん?」
「………ああ」
すっかり忘れていたと顔が告げている
「とりあえず私の時は、セントラ語の試験なんてなかったと思ったな」
エルオーネが、小さく首を傾げる
「そういうことは問い合わせてみた方が確実だとは思うが、試験があるかどうかは、専攻によるんじゃねーのか?」
ラグナがエルオーネの真似をする様に首を傾げてみせる
「………………」
気持ち悪い
スコールが顔をしかめるのと同時に、エルオーネの手が動く
「いてっ」
手が当たる軽い音
「人の真似しないでくださーい」
頭をさすりながら、ラグナが立ち上がる
「ま、セントラ文明でも専攻しない限りはセントラ語なんか必要ねぇと思うけどな」
ラグナの手が、受話器を握る
「もしかするともしかする可能性はあるかもだもんね」
エルオーネの手が、テーブルの上に置かれた募集要項を引っ張り出した

「その他はともかく、問題は社会情勢や歴史じゃない?」
エルオーネの手が歴史書を捲る
「あー、エスタ側から見た歴史に変わってるからな」
ソファに座り込みながらラグナが口を挟む
「近代なんて今までの知識はまるで役にたたないんじゃない?」
「まぁ、閉鎖されてたからなぁ」
エルオーネの手によって次々と開かれるページ
ページの一つに目をとめ、自然に顔が歪む
スコールの表情に気が付いたらしいエルオーネが覗き込んで、吐息を漏らす
「私達には、何言ってるの?って感じだけどね」
「そうだな」
開いたページに載っているのは“魔女戦争”の折りの話
視線を向ければ、ラグナがわざとらしく視線を外す
ため息が一つ
歴史として載っているのは、ラグナ達の行動の結果
だかきっと、ラグナ本人に聞いた所で役には立たない
「でも、まぁ、仕方ないよねぇ」
「………そうだな」
幾つもの紙を捲る音が重なって響いた

 End