強い衝撃と共に列車が急停止したのが数分前 連絡も報告も無いまま時間が過ぎて、悲鳴が聞こえた 前方から聞こえる幾つもの悲鳴に視線が交わされる 「問い合わせてみます」 一人が車掌へと電話を入れるのと同時に窓が開けられる 悲鳴と銃声 それから怒鳴り声 窓の外を覗き込んでいた頭が引っ込み、窓が閉められる 「………………」 自然に向けられる幾つもの視線 「―――モンスター?」 耳に聞こえた言葉に、問いかけの視線を向ける 軽く竦められた肩 「襲われたってことか」 ラグナの言葉に肯定の意が返る 再び幾つかの視線が交わされる 「護衛の人達がモンスターの討伐に出ているそうです」 通話を終えたらしい秘書官が報告する 「ご安心下さい、か?それとももうすぐ片がつきます、か?」 「すぐに騒ぎが収まるのでそのままお待ち下さい、でしたね」 「収まりそうか?」 『到底無理だな』 そう告げてウォードが武器を手にする ウォードの動きに併せて兵士達が立ち上がる 「さすがに行っちゃまずいよなぁ?」 思わず口にした言葉に 「当然だろう」 予想通りキロスの素っ気ない言葉が返ってくる 今回の立場はガルバディアから呼ばれた正式な国賓だ 列車がモンスターに襲われたってことは、相手側にとっては予想外のトラブル 自分達の手でどうにか物事を収めたいんだろうが……… 「一般人が乗ってるからな」 大陸間を移動する列車 この列車には、エスタの人間も乗っている 「手を出す理由としては充分だな」 ウォードが護衛兵を連れ部屋の外へと出て行く 「行かないのか?」 「私まで行っては恨まれそうだからね」 「確かに、ちっとは恨むかもなぁ」 少しして、誰かが開けた窓から、音が聞こえてきた 『苦戦しているな』
微かな振動と共に列車が動き出す
室内にのんびりとした空気が漂っていた
End
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