扉を開いて、閉じる 思わず零れ落ちるため息 「どうかしたのか?」 何も無かったらため息なんて吐かないと思うわ そう言い返したかった言葉は飲みこんで、曖昧に笑ってみせる 不思議そうな顔をして、近づいてくる 私は扉の前を離れて 手が扉を開く 「………………」 無言で閉じられる扉 ゆっくりと視線が向けられる 「………どうするの?」 問いかけにそっと視線がそらされる 「どうするっつってもなぁ」 知らなかったことにするって訳にはいかないだろうしな ため息混じりの言葉に同じようにため息 無かった事になんて出来るはずもない 扉の内側から“カツカツ”と小さな音が聞こえる なんとなく、顔を見合わせる このまま、扉を開けずにいるって訳には行かない 扉をひっかく音と鳴き声が次第に大きくなる どちらからともなく伸びた手が、もう一度扉を開けた 「どっから迷い込んだんだろうね」
その日から、優秀な猫が一匹住み着いた
End
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