これからの望み


 
「将来の夢って何かある?」
何気なく聞いた質問
「夢?」
「夢までいかなくても、やってみたいこととか―――」
聞いたことに意味がある訳じゃなくて、ただ聞いてみただけの言葉
「夢はともかくとして、やってみたいってことはあるよな?」
自分は質問には答えずに、周囲へと話をふる
とたんに上がる声は少しばかり切実で
確かに休暇は欲しいけどね
なんて、思わず同意していた

「今後やりたい事」
キロスが不意に呟く
『昼の話か?』
昼の話、エルオーネの質問
エルオーネの言葉は“夢”だったけどな
みんな解っているが、誰もそんな事は指摘しない
それこそ今更、だ
「そうだなぁ、とりあえず世界一周でもしてみるか」
「こりないな」
『またか?』
ラグナの言葉に間髪入れず返される
「前はちっと違うしなぁ」
結果的に世界を回る羽目にはなったけどな
『行くのなら、一人で行ってこい』
「記録を後から見せてもらおう」
にやにやと笑いながらの言葉は、まぁ予想がついたけどな
「後で後悔しても知らねぇぞ」
「後悔よりも安堵の方が大きいだろう」
いつものやりとり
変わらない軽口
「んで、キロス達はなんかないのかよ?」
やれるのならやってみようかって程度のささやかな望み
「とりあえずは、誰にも邪魔されず一人で過ごす時間だな」
キロスの言葉にウォードが無言で肩を竦める
「すぐに飽きるんじゃないか?」
一人で静かに時を過ごす………
似合いそうには見えるけどな
ラグナの言葉にキロスが笑みを浮かべる
「必ずしも、長い時間である必要はないだろう」
元からすぐ出てくるつもりってことだな
「………で?」
ため息と共にウォードへと視線を向ける
『………………………』
随分長い時間黙り込んだ後、ウォードはただ首を傾げた

真夜中、不意に思い出した会話
「やりたいこと、夢か」
かつて思い描いた夢
やりたいと願った事
幾つかは叶い
幾つもがこぼれ落ちた
今、望むことはただ
この時間が続けば良い
 
 

 End