困惑


 
ガーデンの事について相談がある
キスティスからの伝言に集まった学園長室
机の上に置かれた、いつもは存在しない書類がやけに目を引いた
わざとらしい位にわかりやすく“困っています”といった雰囲気を醸し出すキスティスの視線はその書類に向けられていて、相談事っていうのはそれに関することに間違い無い
少しの間の無言
「どうしたんだ、ソレ」
なんとなく視線でやり取りをして、代表してゼルが問いかける
「とりあえず座って頂戴」
わざとらしいため息の後にキスティスが着席を促した

「察していると思うけど、今回の相談事はこれよ」
キスティスの手が積み上がった書類を押して寄越す
「随分多いけど、なんやのこれ」
手に取るように促す動きに、それぞれが1枚書類を手にする
それぞれの署名に書き記された、名前や住所などの情報に顔写真
「入学希望者が多いのよ」
書き記されたタイトルは確かに“入学願書”
机の上に積み重なった書類
「それ、全部なのかっ!?」
大げさに驚くゼルの隣で
積み重なった数としては確かに多い、けれど………
セルフィはアーヴァインと顔を見合わせる
「書類はそれで全部?」
「ええ、いつもの3倍はあるようね」
キスティスの言葉にセルフィは首を傾げる
「物好きなヤツが増えたのか?」
「興味本位ってところね」
呆れた様に、困ったように話を続ける二人を見ながら、セルフィはそっとアーヴァインの袖を引く
「あれで全部やったら、多くない思うんやけど」
「うーん、僕もそう思うんだけどね」
毎年の新入生いうたら、数千人以上いておかしくない
あそこに有る書類はむしろ少ない位やと思う
「盛り上がってる所、悪いんだけどさ………」
アーヴァインの言葉に、二人がようやくこっちを向いた

「それならさ、体験入学をしてみたらどう?」
世界に3校あるガーデン
その中でバラムガーデンだけが他の2校とは違う
“バラム”という国とは関係のない独立した民間の施設だということ
ガルバディアの様に国軍の養成期間ではない
トラビアの様に入学が義務付けられているものでもない
ただ希望した者だけが入学する場所
だからバラムガーデンに入学する者は毎年それほど多くは無い
けれど、あえてバラムガーデンへと入るだけの理由を抱えている
“使い物にならなけば意味がないわ”
キスティスが言った言葉がバラムガーデンらしさなのかもしれないけど………
3人は今までと同じ様に理由の有る人達だけを受け入れる手段を話し合ってる
「平和な世界で真面目に傭兵になろう思う人ってどれくらいいるんやろうな」
思わず呟いた言葉、3人には聞こえていないみたいだった
 
 

 End