封鎖
タダの旅行者
この役割が案外難しいことは程なく解った
ようやくたどりついたティンバーの街はあちらこちらに兵士の姿が見えた
人々と兵士達の間に張りつめた空気か流れているのか解る
殺気だった兵士達の目の前を無防備に歩く事が酷く困難だ
「肩の力を抜きなさい」
耳元で囁かれた言葉に、苦労して緊張を和らげる
「彼等も、善良な旅行者に襲い掛かる様な事はするまい」
街の入り口を固める兵士の姿は目の前に迫っていた
中に入ってしまえば、普通の街に見えた
所々街角に立っている、武装した兵士の姿さえ無ければ……
だが、その兵士の数もさほど多いという程では無い
長い年月の末、この状況に慣れたのだろう、住民は、兵士達と視線を合わせないようにして、上手に道を歩いていく
「さて、まずは宿を取るとしよう」
幾分緊張を和らげたスコールの背を軽く叩き、宿へ向かい歩き出した
「そろそろ着いた頃だな」
任務を持ち旅だったそれぞれが、目的の地へ着いた頃合い
ラグナは、サインする手を止めた
こちらに視線を向けた、補佐官の1人が小さく頷き返す
エスタを遠く離れた土地からは、簡単に連絡をすることが出来ない
後は彼等が、役割を終えエスタへ戻るのを待つだけ
「危険なのは、バラムガーデンってところか」
遙か昔訪れた時と何ら変わらない状況であるなら、特に心配する事も無い
だが、あれが偽りの姿では無いとしたら、確実に変化が訪れている
『彼等なら上手くやるだろう』
あいつらの働きを一番身近で見ているウォードの言葉だ
「お前がそう言うならそうなんだろうな」
信頼はしている、だがどうしても嫌な感じがする
ラグナは無意識の内に、手に持っていたペンで机を叩いていた
「ガルバディア大統領の訪問」
どうにか宿に泊まる事はできた、だが宿の主人に聞かされた事情に、ため息が漏れる
街にいる兵士達の数が多い気はしていたが、それほどの人物が現れる事になるとは思いも寄らなかった
「これで、私達は少しばかり動きにくく成った」
私の言葉にスコールが頷き、考える仕草をする
「……だけど、ガルバディアがどんなつもりなのか、解るかも知れない」
確かに、わざわざティンバーまでやってくる事に何らかの意味はあるだろう
どうやら、街の出入り口が閉鎖されるらしい
この状況では、当初の目的を果たすことさえも困難になる
「目立たないよう状況を見守るべきだな」
今現在の状況を探る事も危険だろう
今はただ、時が立つのを待つしか手は無さそうだ
もしもの時の為に、街の中を歩く
目的は、地形を把握すること
時々、不意に現れる兵士達の姿に息が詰まる
何でも無い振りをしなければ成らないとも思ったけれど、一般人が、武装した兵士の姿に恐怖を抱かないのも可笑しい……らしい
エスタとは何もかもが違う国
実際見るもののほとんどが珍しいモノばかりで、兵士達はごく普通の旅行者だと、全く疑いもしない様だ
売店で買った地図を片手に駅へとたどり着いた時
同じ年頃の少年達が列車へと乗り込む姿が見えた
翌朝、ガルバディア大統領が乗るばすだった列車が事故を起こしたとニュースが伝え、兵士達による街の警備がいっそう厳しくなった
To be continued
Next
|