静寂


 
いつもと同じ夜
いつもと同じ時間
いつもと同じ作業
毎日繰り返している日常
その作業の手が止まる
何かが違う……
微かな違和感
だが、どこが違う?
答えが見つからないまま、視線を窓の外へと移す
窓の外には夜の闇
遠く見える灯りに白いモノが映し出される
……?
興味覚え近づいた窓の外
静かに舞い落ちる雪の姿
そして、辺り一面に降り積もった雪
何時の間に降ったんだ?
不意に肌寒さを感じながら、降り続ける雪を見上げた
 
耳に痛いほどの静寂
『雪の夜は、音が吸収されるんだ』
昔聞いた言葉
話したのは誰で、聞いたのはどこかなんて
そんな事は一切覚えていない
ああ、静か過ぎるのか……
それは辺りに満ちた静寂
今まで感じた事のない違和感の原因
けれど、雪は毎年降っていたのに、今で一度もこんな感覚を感じた事が無かったのは何故だろう
新たな疑問を抱きながら、そっと窓辺を離れる
物音一つ無い夜の闇に飲み込まれてしまいそうな錯覚を感じたから
 
すべての音を飲み込んで降り続ける雪
まるで自分以外の人間が存在しないかの様で、少しだけ怖くなった

 
 
END