転機


 
俺だって、SeeDなんだぜ?
それに自慢じゃないけど、スピードはそこら辺の奴には負けないって思ってる
確かに、さっきは、あいつが後ろから声なんか掛けるから、気を取られてたってのは認める
けどさ〜、いつもなら避けられた筈なんだ
同じSeeDなら、そういう事もあるかもなって思うけど
一般人相手に、ぶつかる瞬間まで気づかないなんてどう考えても可笑しいだろ?
そう懸命に主張した俺に返ってきた言葉は
『なら一般人じゃねーんだろ』
の一言で
軍人には見えないし、ガーデンであんな奴見た事無いっていう主張は
ガルバディアガーデンの人間の可能性もある
の一言で打ちきられた
確かにそうかもしれねーんだけど、どっか納得いかねーんだよな……
まぁ、ガーデンが違うと、その中身もだいぶ違うみたいだけどさ
「よし、行くぞ」
酔っぱらいを脅しつけて店の外へ追いやったサイファーの声で我に返る
サイファーに続いて、裏口を出て
………あれ?
俺の視線は当然の様に後をついてくるリノアの上で止まった
「リノアは帰ってろ」
まともなサイファーの言葉に、俺とセルフィは当然頷いた
「なんで?わたしも一緒に行くよ」
そして、ゼルの目の前で言い争いが始まった

「電波塔を見せて貰う訳にはいかないですよね」
ガルバディア兵士が警備に当たっている場所へはいくらドールの役人であっても手を出す事は出来ない
何をしているのか詳しい事を知りたいところだが
ここで危険を冒す訳には行かない
大統領のいう通り、ガルバディアが事を仕掛けるのを待つ、しかないか
ホテルの部屋、大きなため息を漏らした彼の目の前で、長い間使われた事の無いテレビが動いた

TV局へと続き階段の途中
頭上に不気味な文字の流れるモニターが見える
「気味悪いよね〜」
「無駄口叩いてんじゃねーぞ」
セルフィに返事返そうとした瞬間に、サイファーがいらだたしげな声を上げる
……まあ、さっきの事もあるしな
さっきの言い争いは、結局、サイファーがリノアを気絶させて、パブの店内に放り込む事で決着がついた
可哀相かもしれないけど、やっぱ任務に連れて行く訳にいかないからな
俺とセルフィは今回だけは何も言い返さずに、サイファーの後を追う
そして、壁に設置された巨大なモニターの下に来たその時、突然頭上から男の声が響いた

「よく来てくれましたね」
案内されて入った室内には、記憶とそれほど変わらないシドの姿があった
シドに進められるまま、椅子に座り
話を切り出すタイミングを探りながら、彼の思い出話に耳を傾けていた時
突然、壁の片隅に設置されていたTV画面が稼働した
―――!?
ぶれた画面に映る男の顔
そして、流れ出る男の声
興奮した男が、話を続ける
「………おい……」
呆然と見ていた耳に緊張した声が聞こえた
そして、画面内にガルバディア大統領の姿が映った

大使の紹介?
ガルバディア大統領の言葉ははっきりいって、無茶苦茶だ
「魔女だぁ?」
サイファーが、眉根を寄せて、画面を見上げている
「紹介しよう!!」
派手なアクションと同時に大統領が高らかに宣言する
その声にどういう訳か、変な圧力を感じて、唾を飲み込みながら画面に見入っていた
もったいつける様に、カメラが動いて………
そして、怒鳴り声が聞こえて、派手な音が続けざまに上がった
「行くぞ!」
横倒しになった映像の中に見知った姿が映っている
「あれ、キスティス先生だよね?」
確かにアレは先生だった、その他にも何人か見知った様な顔があったけど……
「面倒な事になりそうだな、おい」
楽しそうに言ったサイファーの声が、耳に残った

「困った事になったわね」
大騒ぎの後、結局俺たちはティンバーのある民家に匿われていた
民家っていっても、この家の主もリノア達とは違うレジスタンスらしい
ティンバーでは、誰もが必ずレジスタンスに入ってるってのは、誇張じゃないんじゃないかって気がする
……今回は、それでひどい目にあったんだけどさ
「…………ったく」
サイファーがこれみよがしに舌打ちをする
困った事になった、なんて言ってるけど、今の状況ってのは、先生のせいでもあるんだよな
期せずして全員の口からため息が漏れる
ま、先生が悪いって訳じゃないんだけどさ……
任務を果たそうとした結果、相手が馬鹿過ぎたって事だもんな
「どっちにしろ不味い事になってるよね、ガーデンは大丈夫かな?」
そうなんだよな、TV局に乱入した奴らってのは、どっかのレジスタンスに雇われた元ガーデン生らしいんだけどさ……
SeeDだって素性を偽って仕事してたらしくて、それの後始末に先生は来た訳なんだけど
「あれほど馬鹿だとは予想できなかったわ」
『俺たちの背後にはガーデンがついてるんだ』
って、追いつめられた腹いせかガーデンの名前出したんだ
そして、結果、その場に突入した、俺たちも巻き添えを食って、兵士達に追われてる
「ここにいても埒があかねぇ、ガルバディアガーデンに行くぞ」
サイファーの宣言で、俺たちは動き出した
 

 To be continued
 
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