疑惑


 
4対2
人数の上でも不利な上に、こっちはSeeDが4人
争いになった場合、確実に不利なのは向こうの方
そんな事は考えなくてもすぐに判る筈
それなのに彼等2人は相変わらずの態度
むしろリラックスしているわね
そして、決定的な状況
私とキロスと名乗ったその人を車中に残し、彼が車外へと足を踏み出した
手には使い込まれたマシンガンが一丁
「ちょっとっ!?」
彼に私が声を掛けたのとほぼ同時
表情が一変する
え?
とまどいを感じながら見守る私の目の前で、適確な動きで敵を一掃し、そして何事も無かったかの様に車中へと戻ってくる
そして、何事も無かったかの様にたわいもない雑談が繰り広げられている
民間人である筈がない
“かもしれない”が確信に変わる
この様子といい、彼の動きといい“ただの旅行者”である筈がない
少なくとも最小限の戦闘訓練は受けているはず
キスティスは手の中の武器を握り閉める
狭い車中で使うには向かない武器だけれど、これが全く使い物にならないわけではない
手持ちの武器はこれ一つだけということもない
「あなた、何者なの?」
“ガルバディア兵”その単語が脳裏に浮かんでいた

約10年前、初めてエスタを訪れた時、驚かされたはその科学力の高さ
聞かされ、想像していたものよりもよほど高い水準に達していたそれは、他国との関わりを断ち、深いシールドに閉ざされ続けている現在もより一層技術力を増している
バラムガーデンの片隅で、彼等は学園長室で繰り返される会話を拾っていた
鮮明に音を拾い上げるそれが伝えてくる数々の情報
その中で重要な事が一つ判明した
“ガーデンは、ガルバディアと手を組んでいる訳ではない”
そして、少なくとも学園長は、SeeD達を危険に巻き込みたくはないと思っている
―――表面上は………
ガルバディアと手を組んでいる訳では無い、その件に関しては真実だろう
だが、学園長の心理については、懐疑的にならざるを得ない
面倒な事に巻き込まれた彼等の為に命令文を届ける
その点に関しては、多少の疑問を感じるが納得出来る範囲だ
「……どっちが行く?」
だが、続けられた内容が気に入らない
『ガルバディアガーデンへと届けるように』
はっきりと聞こえた言葉、不満を滲ませた、2つの声
辿りつくか、立ち寄るかすらも判らない場所への伝言
それに不満を、不審を覚えない者は居ない
ひょっとすると、彼等とは全く違った用件が書かれて居る可能性もある
「そうだな……向こうは、関わりが深い、行く必要は大いにあるだろうな」
二人の間に僅かな沈黙が落ちる
一見、真面目で几帳面な好青年に見える長年の相棒の肩を叩き
「行って来てくれ、俺よりもお前の方がどうにかなりそうだ」
ファウロは意地の悪い笑みを浮かべた

「あなた、何者なの?」
堅く冷たい声が問いかける
「ただの旅行者、なんて言い訳は聞けないわ」
彼女の声と共に、窓の向こうに、強張った顔で近づいてくる彼等の姿が見える
ちらりと向けた視線の先、キロスは、いつもと変わらぬ様子でハンドル握っている
ドアが開き、手荒に閉まる
「なら、どんな答えが聞きたいんだ?」
スコールの言葉と共に車が再び動き出した
 

 To be continued
 
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