出立


 
「それで結局あんた達も来るってのか?」
あのいけ好かない男がいる間どこかへと身を潜めていた2人が姿を現す
口を滑らせたゼルのお陰で、俺達が何処へ向かうのかばれてしまった
「行き先は同じだ」
何ともはっきりしない物言いだ
スコールの背後で、ゼルはセルフィに雷神は風神によけいな事を言わない様に口を封じられている
背後の動きが気になるのかスコールはその騒動へ視線を向けて、さりげなく眼を逸らした
「少し目障りかも知れないが気にしないでくれ」
男が、そう口を挟む
つまり、結局の所後をついてくる形になるって事だ
「一緒になるのも仕方がねぇ、ってか」
ま、どっちにしろ、お前達部外者と一緒にいる事の意味をここで追求されるとこっちも面倒な事になる
付けられているような距離が空くのは、正直気にいらねえが、仕方ねえ
「そう言う事だ」
それに、デリングシティ迄一緒に向かったとしても、こいつらには作戦自体は聞こえていなかった筈だ
敵対勢力に情報を渡されるって事は無いだろう
やばそうな動きでも見せる様だったら、風神あたりに見晴らせるってのも良いかもしれねぇな
騒ぎに決着が付いたのか、向かい側からこちらの様子を真剣に見ている風神、雷神に眼をやる
そういや、あいつら当たり前みたいな顔して此処にいるが、作戦の人員には入って無かったよな?
「一言、言って置くが、俺達の邪魔はするなよ」
始めから、彼奴等を見張りとして張り付かせておくってのも手かもしれねえな
「そのつもりは無いから安心して貰いたい」
何かを言いかけたスコールを遮るように、男が答えを返した

騒動の末賑やかな一行が2組旅立っていく
「そんなに騒がなくても行き先は一つだと思うんだがな」
元気が有り余ってるよなぁ
小さく呟かれた言葉に笑いが零れる
「そんな事言う程年老いて無いだろう」
それに、きっともっと賑やかな人だっているし……
「いや、……そうだな……」
からかう様に返した言葉に、オルロワが何かを言いかけ言葉を濁す
「どっちにしろ、ここからデリングシティへ行くためのルートは決まってるって事だ」
問いかけの視線は、上手くはぐらかされる
「さっきのやり取りを何だと思って居るんだろうな?」
固定化されたルートだからこそ、同じ方向に行く事になるが気にするなという会話を交わしていた
「……確かに……」
誤魔化された内容が気になるが、
長い間付き合って判っている彼の性格では、一度言葉を濁してしまえば、話せる時が来るまで決して話さない
スコールは、歩き去っていった彼等の後ろ姿へと視線を向ける
「そろそろ出発するか」
そう言って、歩き出したオルロワが、宥めるかのようにスコールの頭へ軽く手を乗せた

「方向音痴じゃなくて良かったな」
駅を眼の前にしてしみじみとオルロワが呟く
「…………」
最近聞き慣れた言葉にスコールは深くため息を吐く
「これ位の距離で道に迷うはずがない」
だいたい地図も持っているし……
誰もが感心したように言う言葉に、少しばかり反発を感じて言い募ろうとしたスコールの耳に、押し殺した笑い声が聞こえる
「確かにそうだろうが……」
言葉が笑いに紛れて出てこない
「…………」
何時までも笑いを収めないその態度にスコールは、オルロワを置いて列車へと乗り込む
「あの人は、迷うんだ」
暫く経った後、笑いを収め乗り込んで来たオルロワが、楽しげに耳元で囁いた
 
 
 
 

 To be continued
 
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