乗り込んだ車両に人影は無かった 先ほど確認した時刻表には、現在時刻近辺にはデリィングシティ行きの列車は存在していなかった 特別列車でも運行されていない限り、彼等もまたこの列車に乗っている筈だろう 目的地が同じである限り、今無理に彼等を捜す必要は無い それよりも、この時間を有効に利用した方がきっと効率的 振り返った視線の先、オルロワは壁に背を預け天井付近を見上げている 彼の視線を辿った先には、一台の古びたスピーカー 線路を走る列車がたてる音が耳に響く 音を伝達する機能があるならば、逆に音を収集する機能があった所でおかしく無い 静かとは言い難く、煩いとも言えない状況 声を言葉として、聞き取る事が出来るだろうか? 声を交わさない方が良いって事なんだろうか? オルロワは、先ほどから一言も言葉を発しない 困ったように視線を移動した先、扉の側で淡い光を放つ操作パネル 軽く視線を流し ―――ロックを兼ねたデータ集積 ソレの意味を理解する どこかに監視カメラがあっても可笑しくないな 列車がたてる音に紛れて、どこかで聞こえる筈の機械音は聞こえない 下手な事はしない方が無難、か スコールは、扉の外の光景へと目を移した 代わり映えのしない光景
To be continued
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