会遇


 
バラムガーデンの施設内
尚も留まり続けるファウロへと向けられる強い視線
数多い生徒達からは、むしろ歓迎するような気配を感じ取れるが、不気味な制服に身を包んだ教師達から強い敵意を感じる
邪魔者ってところか……
どうやら、学園長の滞在許可と、余計な事を一切話さないという態度のみがこの場所に留まる事を許されている要因らしい
……別に、気を使ってる訳じゃないんだがな
こっちとしても、話せない事ばかりってな
側を駆け抜ける子供達を笑顔で見送り、気ままに学園内を歩く
そろそろ此処で情報を収集するにも限界が見えてきたかもな
近頃行く先々で制服教師の顔を見るようになった
気になる事も多んだけどな……
生徒と教師の温度差や教師達の二極化
そして何よりも、学園長の不可解な態度………
中央に位置するエレベーターの前を通過する
両脇に、相変わらず張り付いたままの教師の姿
エレベーター内にある決して押す事の許されないボタン……
あれも、気になる事の1つだな
内心考え込みながら、足が勝手に廊下を進む
気になる事は多すぎるが、そろそろ一度、彼奴と合流しないとな
……ガルバディアの方も“魔女”なんてモノが出て来てるし
気が付けば、進むに任せたままの足は訓練施設へと続く廊下へと辿り着いていた
引き返し掛けた足が、背後からの視線を感じ取り、何事もなかったかの様にそのまま前へと進む
こういうのには、興味無いんだが、この際仕方無いよなぁ
内心ため息を感じさせないまま、ファウロは施設の中へと消えていった

施設内にいる、生きた本物のモンスター
モンスターを相手に訓練を重ねる生徒達の邪魔に成らない様、モンスターを避けながら、ゆっくりと施設内を歩く
………1対1で闘っているモノの姿は見えない
SeeDレベルには訓練相手にもならないが、一般生徒レベルには荷が重い、か……
……こいつ等が学園施設内に放たれたら、混乱は免れないな………
SeeDの名を手に入れた者は殆ど学園に留まる事がない
そして、どういう訳か、SeeDとしての称号を名乗る事ができる期間もまた極端に短い
世間が思う程、バラムガーデンに戦闘能力は無い
他はともかく、此処を落とすのはそう難しい事では無いのかも知れない
……ま、謎の部分に何か隠されてるって可能性も否定出来ないけどな
施設の奧、テラスへと続く階段の手前で足を止め、壁に背を預けて、彼等の様子を見るとも無く見ている
………考えてみりゃ、SeeDを集結でもしない限り、戦争を仕掛けるだけの手勢をここは持ってないのかもしれないな
少なくとも、この状況を見る限り、うちが負ける事は無さそうだ………
………やっぱり、そろそろ帰るかな
ここに居た所で、進展が得られる事もなさそうだし、結論も浮かんだし……
ファウロの視界に、不安げに辺りを見回しながら歩いてくる少女の姿が映る
理由も分からないまま、彼女から、視線が離せない
……なんだ?
どこか感じるのは違和感だろうか?
少女の側の木々が不自然に揺れる
反射的に駆け寄ったファウロの耳に、彼女の悲鳴が聞こえた
―――ここの人間じゃない!?
感じ取った違和感の正体、身構える事無くモンスターに捕まった少女の様子に、ソレが間違いでは無い事が確信出来る
駆け寄りながら、携帯していた剣を抜刀する
モンスターの向こう側、顔色を変えた少年達が名前を呼びながら近づくのを認識しながら
ファウロの持つ幅広の剣が音を立て、モンスターを切り裂いた

「ここは危険です」
駆け寄ってきた白い制服の少年が少女を抱き起こす
「さあ、行きましょう」
何か言いたげな少女を促し歩き出そうとする少年の姿に
「怪我は無いんだな?」
ファウロは人好きのする笑みを浮かべて、2人の側へと歩み寄る
「え……あ、はいおかげさまで……」
答える少女の側で、彼は少しばかり警戒したような視線を向けている
「ここは、客人には危険な所もあるから、むやみに足は踏み込まない方がいいぞ?」
2人へと近づき、声を潜め
「どうしても見てみたい時は、彼とはぐれないようにした方がいい」
冗談っぽく囁き掛ける
「………そうですね」
少し警戒が解けたような笑顔
ファウロは彼女の様子を気にしながら、当たり障りのない話を2、3交わす
「それじゃ、また機会が会ったら………」
「はい、有り難うございました」
少年が先に足を踏み出し、少女がその後に続く
そして、ファウロの側を通り過ぎようとしたその時
「エルオーネ・レウァール?」
耳元へと囁きかける
弾かれたように彼女が振り返る
「また、今度話しをしような」
振り返った彼女にだけ分かるよう合図を送る
「ええ、また今度」
ファウロの誘いかけに、目を見据えながら、エルオーネが言葉を返した

辺りに人の気配が無い事を確認し、ファウロは小さな笑みを浮かべた
彼女が信用してくれると楽なんだが……
いっその事大統領を呼んだ方がいいのか?
ま、どっちにしろ、もうしばらく此処にいる事になりそうだな……
今後の事を考えながら歩くファウロの耳に誰かと闘うモンスターの声が聞こえた
 
 

 To be continued
 
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