情報


 
町中に軍人の姿が目立つ様になった
人々は熱狂的ともいえる態度で、彼等を迎え入れている
魔女のお披露目から数日
暗殺失敗から、数日
軍上部の役人が、幾人か姿を消したという噂を聞いた
そして、姿を消した大統領の替わりに、魔女が国の実権を握っている
あの日以来沈黙を保ち続けている魔女の目的が何であるのか、未だ分からない
足早に進むキロスのすぐ側をまた1人軍人が通り過ぎていく
何れも魔女の存在を良く思っていなかった者達
……さて、どうする?
路地裏の奧、古びた建物へと足を踏み入れた

「D地区収容所、かぁ……」
なりふり構わずに送られて来る報告
傍受される危険性を常にはらんでいるが、緊急事態の今はそういった些細な事に構っては居られない
「……無差別に殺されないだけマシってとこだろうな」
『マシなだけだな』
部屋の中を歩きまわるラグナを、幾人もの視線が追いかける
誰も何も言わないまま時間が過ぎていく
「いかが致しますか?」
秘書官がかけた声にようやく足が止まる
「うん、それなんだけどなぁ………」
『さっさと言ったらどうだ?どうせ決めたんだろ』
いや、確かに決めた事は決めたんだけどよ
どこが楽しげなウォードと諦めた様な側近達の姿
躊躇った事がどこが馬鹿らしくさえ感じられる
「……んじゃ、ちょっと行ってキロス達の手伝いしてきてくれっか?」
キロスってより、多分スコールの手伝いになりそうなんだけどさ
『ラグナ君は行かないのか?』
意外だという様な仕草をして見せるくせに、顔は思った通りって表情をしてやがる
「俺は俺でやる事があんだよなー」
何言って誤魔化したところで、どうせわかってんだろ?
お互い小さな笑みを浮かべる
「ああ、かわりにオルロワに帰ってこいって言っといてくれ」
さすがに何処も彼処も全部面倒見ろって言われても無理があるしなぁ
『伝えるだけは伝えてみよう』
ウォードが退室し、扉が閉ざされる
「…………帰ってきてくんねーと困るんだけどな」
室内に残った彼等が同情の眼差しを向けた

D地区収容所
脱出不可能と言われる刑務所、過去この場所からの脱出に成功した者は存在しない
危険極まり無いこの場所に関するデータが集められている
『―――助けないと』
無意識のうちに零れ落ちたスコールの言葉に従って、任務とは関係のない筈の作戦が煮詰められていく
どこか楽しげな彼等の様子に、言えずに居る事が一つ
これは命令違反にならないんだろうか?
キロスが探し出してきた古びた建物の扉が開いた
見かけに反して音も立てずに扉が閉じる
「先ほど連絡があったんだが……」
キロスの言葉にスコールの体が強張る
「ウォードが来るそうだ」
酷く深刻な顔をして、キロスが一言言葉を告げた
 

 To be continued
 
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