刑務所


 
むき出しのコンクリート
熱を奪う冷えた感触
どこからともなく聞こえる、囚人達の息づかい
のしかかる、暗く重い空気
始めて見た刑務所は、息詰まる程の圧迫感を感じた

声を上げる間もなく崩れ落ちた兵士を物陰へと運ぶ
キロスが慣れた手つきで兵士を縛り上げている間
あらかじめ用意していた制服を着込む
幾つかの武器、道具を隠し持ち
顔を隠す為に帽子を深く被る
「何、気楽にやれば良い」
緊張を解きほぐそうとする様に掛けられる言葉
「……はい」
彼等を助ける事を承認して貰う為に出された幾つかの条件
何よりも、自分の安全を優先する事
『1つ目の退路は確保出来たしな』
兵士から取り上げた鍵を手にウォードが笑う
無機質な床が靴音を小さく響かせる
「堂々としていれば、気付かれないものだ」
思わず足を止めたスコールの隣を平然と歩き抜けた

兵士達に疑われる事無く順調に階を登る
サィファー達がどの階のどの位置に居るのか……
そういった情報は全く手に入っていない
目的地は制御室
まずはそこを抑えなければ、最終的に逃げる先を失ってしまう
階段の先に見えるフロアの様子が変わる
厳重な扉
扉を護る様に立つ兵士の姿
不審を抱かれ無い程度の時間を置いて、先行するキロスの後を辿る
扉の中に居る人間に悟られてしまえば、全ての作戦は失敗する
勝負はほんの一瞬
扉へと近づいたキロスへと兵士が視線を向ける
心臓が、1つ大きく脈打つ
ガルバディア式の敬礼を交わす
足音を殺し、一気に距離を詰める
穏やかに、一言、言葉を交わした
その隙に、隠し持った武器を打ち込む
――即効性の睡眠薬
衝撃と気配に兵士が声を上げかける
傍から伸びた手が声を封じる
腕から逃れようと抵抗した身体から不意に力が抜ける
念のためか鳩尾に鋭い一撃を加えた後、時間を置いて声を封じた手が離される
気を失った兵士を物陰へと運んだ

扉の内側が一連の動きに気が付いた様子は無い
耳を澄ませば、微かに話し声が聞こえる
スコールの手に武器が握られる
「さあ、ここからが本番だ」
ひそめた声がタイミングを告げ、勢いをつけて扉が開かれた
人数は3人
音に反応した兵士達がこちらを振り返る
大きく踏み入れた視線の先
何が起きたのか理解出来ずに居る兵士を1人殴り倒す
鈍い音を立てて崩れた男の向こうに、驚愕に目を見開いた顔
なぎ払った腕に感じる重量
兵士の背後にあった椅子ごと大きな音を立てて、崩れ落ちる
スコールの背後で扉の閉じる音がした
「お、お前………!」
警告か、問いかけか、最後まで言葉を発する事無く、最後の兵士が崩れ落ちた
 
 
 

 To be continued
 
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