攪乱


 
不自然に思われない程度の情報を
施設を支配する管理脳へと組み込んだ命令
スコールは彼の腕がどの程度なのか知らないけれど、不自然を感じさせない程度の情報が流れる、筈だ
身を隠したスコールの視界の中で、時折首を傾げながら機械が操作される
不意に、辺りにけたたましい警告音が響いた
はっとして、音を鳴り響かせるスピーカーへ意識を向ける
―――脱走警報
無機質な声が脱走した囚人と、全職員へ向けて警告を繰り返す
スコールは、厳しい顔つきの彼をそのままに、身を翻す
警告が発せられ、防御機能が作動したならば、一刻も早く動かなければならない
………思ったよりも早かったな……
彼等が脱出する機会を作ると同時に
彼等の脱出を気付かせる行動を同時に取った
理不尽な事しているという自覚がある、けれどそうしなければならなかった
自分達の存在を覚らせない為に講じた幾つかの手段
「……最悪じゃないかっ」
巧妙に呼び寄せた彼が、緊張した面持ちで走り出した
何者からか救出を依頼された、ガーデンの生徒
SeeD達の脱出の手引きをしたのは、彼だと思われるだろう
そして彼は、SeeD達が隙をつき強引に脱出を計ったと考える
後日良く話し合えば相違点に気付くかもしれない
けれど、今この場を脱出する間は、そんな事を話している暇は無い
スコールの指示通り、施設が浮上を始めている
完全に外へと出るまでに要する時間は数分
浮上しきると同時に、再び潜行を開始する様に指示を出している
早くも無く、遅くも無く、絶妙のタイミングで、最下層へと辿り着かなければならない
階段を足で降りたのでは間に合わない
なによりも、そのルートでは、彼等と顔を合わせる可能性が出てきてしまう
通信機が、微かな点滅を繰り返す
彼等からの合図が届く
それぞれ、移動用のアームの中へ収まったという合図
施設の構造は、螺旋状の3つの塔
こちらの人数は3人
幸いにも、彼等は別の塔へと収容されていた
そうとなれば、これほど都合の良いモノは無い
ただ、移動する為には、制御室からの指令が必要になる
「どこに居る?」
最後の詰めは賭け
焦りかける気持ちを抑えながら、スコールは辺りを探す
不意に、視界を掠める鮮やかな赤い色
いたっ!
通り過ぎようとした足が止まり、彼等の方へと向きを変える
彼等の元へ近づくスコールに1人が気付き振り返った
そして彼は、笑みを浮かべて嬉しそうに名前を呼んだ
 
 
 
 To be continued
 
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