不在


 
目に痛い程の青空が広がっている
長く続いていた水路が終わり、目の前には港が広がっている
きびきびと働く人はみんな似たような制服を着ていて、此処が軍港である事を教えている
心臓が痛くなる程の緊張
ゆっくりと近づいて行く船に、視線を凝らす
もしかしたら、此処にいるかもしれない
そんな期待を微かに抱いていたから
船が着岸するのに備えて、色んな準備をする人の姿が見える
近付くごとに、はっきりとしていく人の顔
けれど………
その中に探している人の姿は無かった

「―――居ない?」
特権を利用して無理矢理割り込んだ回線
ようやく繋がったその先に現れたのは、長年の友人の姿
諦めを感じながらため息を零し、もう一度呼んで貰うよう請求しようと口を開くと同時に『不在』という言葉が告げられた
「ああ、数日前だが、確認したい事もあるって出掛けていった」
そう言いながら指さす仕草
「……それは呼び出せないか」
指した指は上を向いている
「無理をすれば出来ない事も無いだろうが……」
無理をしなければならない事か?
と、視線が問いかけてくる
「緊急事態というわけじゃないんだが………」
一刻も早く会いたいのは当然だろう
それにここまで引っ張ってきて会わせられないなんて事は言えないしな
そもそも彼女はエスタという土地に良い感情を抱いてはいないだろう
だが、宇宙に昇ったというなら、そう簡単に連絡を取る事は出来ない
あそこは、アレがある所為で、特に電波の伝わりが難しくなっている
「スコール達は戻っているのか?」
もう一人の関係者の名前を挙げる
「残念ながらまだ戻っていないな、数日中に帰還するとは思うが……」
疑問を浮かべた視線が投げられる
「………最高司令官をお願いできるか?」
この際仕方がない
全く知らない人という訳でも無い筈だから、確実に残っている人に
と、考えた所で
「司令も一緒」
即座に返事が返ってくる
「……………」
とりあえず、連絡取れそうな所からして貰うべきだろうな
ため息と共に、どうやら現時点の責任者らしい友人に現状を説明した

見上げた空には青空が広がっている
聞かされたラグナおじさんの居場所はどこにも見る事が出来ない
「スコール達の方は、明日にでも到着するらしいんだが……」
どちらでも好きな方を選んで良いと言われた
おじさんを追って、宇宙に行くのも
このままスコールを待つのも私の自由
私の好きなようにさせてくれる
空を見上げている私に太陽の光が眩しい
心臓が大きく音を立てている
ずっと感じていた不安、緊張感
頼めば今すぐにでもおじさんに会いに行く事ができる
すぐにだって会いたい、けれど………
ゆっくりと視線を落とす
「私は……………」
一言一言、言葉を噛みしめる様に、私は希望を告げた
 

 To be continued
 
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