家族
心臓の鼓動が止まらない
驚いた様に私を見つめて
そして、お互いにぎこちない会話を交わした
覚えているのは、幼かった頃の事
時折、言葉を探して、記憶を探す
お互いに、昔の記憶は薄らいでいて、全部覚えている訳じゃない
それでも懐かしいという想いと、それと違った不思議な感情が滲み出てきて
夜明けを迎えた
そうして、再会を果たしてから2日
もう一つの再会をする覚悟が決まった
宇宙空間へ行く事は、確かにいつもの事
いつもと変わらない作業の一つではある
だからこそ誰も口には出さないが、これがいつもとは違う事は解っている
………今は宇宙へ行く時期ではないから
何かが起きたという報告は聞かない
けれど、これから何かが起きようとしているのかもしれない
集められてきた情報を元に、そういう判断を下したのかも知れない
ただでさえ危険な場所
それ以上に危険になるかも知れない場所
本当は行ってほしくない
けれど、今すぐにでも再会を果たして欲しい
複雑な感情を抱えながら、飛び立つ準備を進めた
「連絡はしないでおこう」
その方が楽しいから、と
楽しげに弾んだ声が言葉の合間に告げる
連絡無しでは危険だとか、規則に違反するとか
「一緒には誰が?」
そういったごく普通の言葉は一切無く、当たり前の様に会話が進んで行く
「そうだな………」
悩む様な素振りを見せ、キロスは視線を彷徨わせた
「……ここはスコール君とするべきかと思うが」
エアステーションの管制室からは空が近い
昼間はここから辺りの光景が一望出来て、エスタ市に居る時とは違った空の色が見える
職員の殆どが出払ってしまった建物は、遠く空を行く機体へと指示を与える音だけが聞こえてくる
「…………行かない方が良いと思う」
もちろん一緒に行っても歓迎してくれる、とは思うけれど
たぶん、一緒に行かない方が良い
「そうかな?」
笑みを含んだ声
「報告書の提出もあるから……」
今更報告書を提出する必要は無いのかも知れない
「そんなモノもあったな、そう言えば」
納得したかの様な様子で、そんな事呟いてあっさりと引き下がる
「となると、私かウォード君のいずれかが向かう事になるが……」
再び、調整と打ち合わせと命令を始めるキロスの横でスコールは窓の外へと目を向ける
四方を夜の闇が覆っている
遠くまで続く大地と海の姿は、闇に飲まれて見えない
ただ―――
空に浮かぶ月が、赤く大きく見えた
To be continued
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