航行
ガーデンの航行は順調
操作の仕方もあらかた判明した
下手な事をしなければ、このまま海の上を行く事が出来る筈だ
「いいか、余計な事して壊すんじゃねーぞ」
こいつらだって自分の命は惜しいだろうからおかしな真似はしないとは思うが、何十年だか、何百年だか使われなかった機械だ、ちょっとした事で故障したとしても可笑しくはない
「勿論そんなつもりは在りませんよ」
解っているのか、いないのか、いまいち判別がつきにくい口調でシドが言う
「さあ、貴方も疲れたでしょう、戻って休んではどうです?」
当分このまま変化は無さそうですから
穏やかに笑いながらも、有無を言わさず、やんわりと部屋から追い出される
……たぬきがっ
今度は声は出さずに吐き捨てる
気に食わないからといって、扉を開けて戻っていくのもみっともない
しかたねぇ彼奴等の様子でも見てくるか
ガーデンが浮いて飛ぶ、なんて馬鹿な事が起きてるんだ
訳も分からず混乱している奴も多いだろう
トラブルが起きてそうだな
こういった騒ぎに乗じてトラブルを起こす奴というのは必ず出てくる
彼奴等だけじゃ、抑えられそうも無いからな、手伝いに行ってやるか
サイファーは何処か楽しげにガーデン内を歩き出した
「貴方、ここで何をしてるの?」
ガーデンにある数少ない来客の為の宿泊施設
殆ど人のいる事の無い場所で、キスティスは数人の人を発見した
「……あ」
およそガーデンには似つかわしくない少年少女が振り返る
そして、何度か見た事のある何処か組織だった少年の姿
「キスティス!無事だった?」
「あなた……どうしてここに?」
声と共に抱きついてきた彼女を困惑しながら受け止める
「それがさぁ〜」
表情が変わり、言葉を連ねようとした瞬間
「失礼ですが、SeeDの方でしたね?」
白い制服に身を包んだ彼が、話に割り込む
話に割り込まれた事で怒鳴りつけようとしたリノアを押しとどめ、キスティスは彼等へと向き直る
「ええそうです、何か不都合でも?」
彼等は、シドから通達の在った正式なお客様
悪いけれど、まともな用件がある彼等を優先するべきだわ
「シド学園長に会わせていただけますか?」
強張った彼等の表情に何か不都合が在った事が予測出来る
「解りました、すぐに呼んで来ますので応接室にてお待ち願えますか」
「ええ、早めにお願いします」
応接室へと立ち去る彼等を見送り、キスティスも足早に歩き出す
「ちょっと、待ってよ!」
すかさず背後から聞こえる声
「悪いけれど、今ちょっとガーデン内が混乱してるから……少し落ち着くまで待っていて貰えるかしら?」
不満そうな表情をする彼女へ、立ち入りが禁止されて居る所以外は見て廻っても良い事を告げる
キスティスの言葉に背後に立つ少年達が色めき立つ
仕方なさそうに頷く彼等を後にして、キスティスは、学園長室へと急いだ
To be continued
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