遠い現実


 
窓の外に見えるのは黒い海
時折闇の中で、光を反射して輝く波が見える
見つめる先、暗い闇が何処までも続いている
広くはない部屋の中で開かれている会議
深く考える事も無いまま席について参加した席上
追い出されたりしなかったという事は、きっと参加する資格があるという事
……けれど
話し合いの内容
会話の中で上がる名前
彼等がその名前を呼ぶ声には、何もない
解ってはいたけれど、感情が見えない
―――本当に忘れてるんだ
ほんの子供の頃
自分以外はみんな忘れてしまっている
ずっと昔の出来事
会話に入る事が出来ないまま、話が進んでいく
印象深い2人の女性
大切な彼女達の記憶
様々な事を言い出す事も出来ないまま
僕はただ、言葉を聞いている
そして
詳しい事情を聞こうと、シド先生が呼び出される
……僕の事を覚えているだろうか?
退出する彼女の姿を見ながら、ボンヤリとそんな事を思った

各々思いに沈んでいる様な無言の時間
「……………エルオーネ、か」
誰かが小さく囁いた言葉
エルオーネ……
知っている人、みんなが知っている筈の人
此処で僕が話をしたら、みんな思い出すんだろうか?
彼女がおねえちゃんだと言う事を、みんなに話したら全部思い出してくれるんだろうか?
遠い記憶と波の音
……でも、昔の事を知っている僕でも、エルオーネの事は何も知らない
何故魔女に、あの人に狙われているのか
何故狙われなければならないのか、何も知らない
「あの夢、関係あるのかしら?」
とても小さな問いかけの声
夢?
「ああっ、そう言えば出てたな、エルオーネ!」
「小さな子供だったけどね」
子供?
思い出した訳じゃ無いんだよね?
ゼルや、セルフィ、キスティスにサイファ
彼等は何の事なのか解っているみたいだ
「一体、何の話だもんよ?」
4人が顔を見合わせる
「そうね………」
少し考える様な仕草をして、キスティスが語り始めた
最近頻繁に訪れる“夢”の話
その中に出てきた人物の事
「それって……」
……誰かの記憶?
浮かんだ言葉を言葉にする前に、扉が勢いよく開いた
 
 

 To be continued
 
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