記憶の中の真実


 
思い出した過去の情景
そして、次々と溢れ出る記憶
アーヴァインの言葉が刺激した記憶の数々
忘れていた大量の記憶に息が詰まる
幾つかの場面
幾人かの人の姿
浮かんだ顔の中に、見覚えのある面影
慕っていた女性の姿
彼女の姿は?顔は?声は?
―――その名前は?
心臓が激しく脈打つ
思い出した記憶の数々
忘れていた事が信じられない、幸せな過去の情景
―――だが
遠い過去の記憶からすれば、今の状況は何処かおかしい
優しい微笑みと冷酷な笑み
記憶と現実が繋がらない
緊張を浮かべた顔と、青ざめた顔
強張った2つの表情
「“イデア”ママに“エルオーネ”おねえちゃん、………詳しい事を話して貰うぜ」
シドの顔色が一層白く変わった

幾つもの視線に晒され、
「ガーデンもSeeDも魔女を倒すために作られた事に変わりはありません」
シドの力無い言葉が零れる
「ただ、ソレを言い出したのはイデアであって私ではありません」
視線から逃れる様にシドが目を閉じる
「イデアは魔女です、ずっと昔に魔女になりました」
殊更ゆっくりと一つ一つ噛みしめる様に吐き出される言葉
「ですから、私はその提案を聞いた時に質問しました、彼女と戦う事になるのではないかと………」
ほんの僅か、声のトーンが落ちる
「そんな事にはならない、そう言ったのですが……」
ゆっくりと区切るように語られていく言葉の数々
長い話の末に解ったのは、何も解らないと言う事
ガーデンが出来上がり、その機能が動き出した頃から、シドとイデアは別行動をしていたらしい
その時期が、次々と孤児院から人が居なくなっていった時期
それ以来特別に連絡も取っていないとは本人の弁
………到底、信じられねぇけどな
結局“魔女イデア”に関しては何も知らない
知らないが“魔女”は倒さなければならない
……めんどくせぇな
シドが主張するのは、ただそれだけ
「エルオーネの方はどうなんだ?」
俺達が孤児院を出るよりも早く姿を消した少女
記憶も無いままに再び逢ったのはこの場所
護衛付きの上に、どうやらガーデンで保護していた節がある
「……彼女は昔から何か不思議な力を持っていたんです……」
幾つもの視線に晒され、シドは落ち着き無く視線を彷徨わせる
「そのせいで、彼女はエスタの兵士に狙われていました」
逃れる為に姿を消した
「まだ狙われているんですか?」
キスティスの質問に幾人かがはっとしたように目を向ける
“エスタ”という国の事を聞かなくなって長い時間が過ぎている
少なくとも俺は、エスタに繋がる人や物を見た事は無い
「いえ、エスタからの追っ手は大分前に現れなくなっていたようですが……」
長い沈黙の末
「今度は“魔女イデア”」
小さな声が、予想外に響いた
 

 To be continued
 
Next