不審者


 
幾つかの情報と彼等から聞き出した事実
様々な事から導き出されたのは、一人の男の存在
『そう言えば、いつのまにか見なくなった』
長い間ガーデンに留まって居たという男の所在に対し戻ってくる言葉
男自身についても、存在は知られていたが、彼が何者で何をしていたのか知る者がいない
男が何者なのか生徒達が知らないというのは、ガーデンにおいては良く有る事だ
疑問を抱く事を禁じ、問いかける事を禁じているのがガーデンだ
……表向きは
どれだけ禁じようと、疑問を感じる事は自由だ
そして、これほどの巨大な施設となれば、幾人かは好奇心の強い人間が混ざっている
そういった連中に聞けば、それなりの情報は手に入る
筈だった……
だが、その人物に対する詳しい事は何一つ耳に入ってこない
その中でも幾つか解った事は
どうやら彼もシドの知り合いらしいと言う事、もっとも、こっちは歓迎されている雰囲気は無かったという話も聞こえている
「また、シドか」
吐き捨てる様なサイファーの言葉に辺りを微妙な空気が包む
「気持ちは分からなくもないけれど……」
苦い笑みと共に言われる言葉
「でもさ、歓迎してる雰囲気じゃなかったんだろろ?それならあっさり教えてくれるかもしんねーぜ?」
ゼルの気楽な言葉に辺りからため息が零れる
「ま、正直に言わなかったらその時はその時だ」
「そうだね」
彼等が、心得た様に頷き返す
言わせるだけだ

「彼、ですか?」
SeeD達に囲まれて、シドは不思議そうな顔する
「ええ、彼も学園長の知り合いだと聞きましたが?」
「知り合いという程のモノではありませんね」
「だが、知ってる奴なんだろ?」
親しげでは決して無かったが、幾度か言葉を交わしている姿を見たって奴が居た
全く知らない奴と何度も話をする筈も無い
「彼は、卒業生ですよ」
もう一度、強く問いかけようとした絶妙のタイミングで、シドがあっさりとその言葉を口にする
「……卒業生?」
戸惑いながら反射的に言葉を繰り返す
「そうです、彼はバラムガーデンの卒業生で、かつてのSeeDです」
……なんだって?
「あなた方の先輩になりますね」
戸惑いを浮かべたサイファー達を煙に巻くかの様に、シドが言葉を続ける
「………元SeeDが何をしにここへ?」
SeeDがSeeDで居る期間は短い
その上、SeeDで無くなったのならば、特殊な例を除いて、ガーデンとの関わりは無くなってしまう
「彼が言うには、何か良さそうな仕事を探しに、と」
戦いの情報だけは集まりますからね
「そんなはずねーだろ」
どれくらいの実力だったのかは知らないが、SeeDという文字を見せれば、どこだろうと喜んで雇ってくれるはずだ
わざわざガーデンまで仕事を探しに来る必要は無い
「いい加減、正直に知ってる事、話したらどうだ?」
さほど広く無い部屋の中を冷えた空気が満ちた
 

 To be continued
 
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