要談



 
抑えた感情が所々で顔を覗かせる
現在の魔女イデアが語る信じられない
信じたくも無いような事情の数々
魔女の中に存在する魔女?
今は存在しない魔女が魔女を乗っ取った?
俄には信じられないが、力の強弱という点が問題となるのであれば、他の魔女が魔女の意識を乗っ取る事も可能なんだろう
………魔女の力に抗う事が出来ず、魔女の意のままに動いた人間の姿はつい先日目にしたばかりだ
だが、イデアの中に存在するという魔女
その魔女の存在はそう簡単に認める事は出来ない
魔女が話の相手に望んだのはオダイン博士だ
適うならば今すぐにでも引き合わせたい所だったが、博士はまだ到着していない
到着まで無言で顔をつきあわせている訳にも行かず、博士に何故会いたいのかという所から話を始める事にしたんだが
話が進むに連れ、今日はとことんついていない事を思い知らされた
魔女イデアが語る事情
未来の魔女という存在
遙か先の未来から、時間を乗り越えてこの時代に干渉しているという存在
信じられないこと
信じたくないこと
不意に落ちないこと
思いも寄らない形でもたらされた情報の数々に気分がふさぐ
とんでも無い情報の数々を整理して、纏めて判断しろっていうのは、俺には少しばかり荷が重い
「ですから、オダイン博士に―――」
言われなくても勿論そのつもりだ
こっちは実際の所“魔女”というだけで手一杯だ
魔女イデアの話は終わり、そしてもう一組博士に会わせろと騒ぐ少年達が先を争うように話を始めた
―――オダイン博士はまだ来ない

強引についてきた元レジスタンス達の話が半ばに差し掛かった頃、勢いよく扉が開き珍妙な男が入ってきた
―――オダイン
エスタの人間の口から出た名前に衝撃が走る
こいつがオダイン?
魔女研究、もしくは魔法研究の第一人者オダイン博士
「………オダイン博士?」
ママ先生が恐る恐る問いかけたのは当然だろう
授業で伝え聞いたオダイン博士の業績と、目の前に居る妙な男の姿は=では結びつかない
博士には見えないという以前に、真っ当な人間にも見えない
だが、エスタの人間と本人の言葉を信じるなら、目の前のこいつはオダイン博士という事になるらしい
俺達の間になんとも言えない微妙な空気が流れる
「オダイン博士にお願いしたい事があります」
しばらくの間が開いた後、意を決した様にママ先生が話を切り出す
「博士達はこちらの部屋でゆっくりとお話しください」
オダインの言葉が強引に遮られ
そして、追い立てられる様にしてママ先生やオダインを残し部屋を出た

辺りを覆うのは静寂
薄暗い空間と、僅かに輝く光と
そして、静かな空間にはそぐわない建造物
来るつもりの無かった場所
始めて訪れた宇宙空間で見たソレは、憎しみと何処か不気味な恐怖を与えた
―――魔女アデル
昔から伝え聞いていた存在
様々な事の原因になった魔女
魔女の影響を考慮し、離れた場所に置かれた装置の中を見る事は出来ない
魔女自体が見える訳では無いのに感じる嫌な空気
目が覚めてから感じていた嫌な感覚が、だんだん強くなっている
魔女に対する嫌悪とか様々な物が入り交じっているけれど
コレは―――
入り交じった感情の奧に隠れているのは恐怖
幼い頃耳に挟んだ事
昔聞いた長い物語
体験した訳ではない、知るはずの無い記憶が告げる恐怖
それとは別にもう1つ
アデルを封じ込めた機械が、スコールの視界の中で静かに点滅を繰り返している
とても、嫌な予感がする―――
 
 
 

 To be continued


Next