月の涙2



 
「まだそんな時期では無い筈なのに………」
「兆候は全く有りませんでした」
騒然とした施設内に人々の声が聞こえる
おじさん達と共に地上へ戻ろうとしたその時、絶妙なタイミングで聞こえてきた音と声
何度も聞こえる言葉から、“月の涙”が発生した事だけは解った
動揺する人々に指示を出して………
「スコール、エルと一緒に先に戻ってろ」
厳しい顔でおじさんが言った
―――胸騒ぎがする
「………任せた」
一言だけ掛けた言葉の先にいるのは、キロスかウォード
いつか、見たことのある光景
あの時と、ずっと昔と似ている
助け出されて、一人だけ安全な場所に帰されて、それから………
「………解った」
引き止めようとした私の耳に聞こえてきた声
そして、私の肩に触れた大きな手
「彼奴等と一緒に直ぐに戻るからよ、エスタの事は頼んだぜ」
施設の職員達が、混乱する事もなく黙々と避難準備を進めている
扉が開いて、閉じる
彼等の元へと急ぐおじさんとキロスの姿
肩に触れた手が宥める様に優しく力が入る
「準備はしていたから、心配要らない」
ちよっとだけ強張ったスコールの声
「………そうね………」
あの時と今は違う
私の傍にはスコールが居て、ウォードが居る
おじさんは戦いに行くんじゃないし………
大丈夫、きっと大丈夫
また離ればなれになるなんて事は無い
ウォードの手が誘うように動きを変える
「行こうか」
また直ぐに会えるから、これ以上心配掛ける前に危険なこの場所から3人で一緒に
近づいてくるモンスターの大群
それが宇宙での最後の記憶

次々と上がってくる報告
エスタ上空を飛ぶ人工物
年配の兵士の証言
そして、警戒の連絡が行き届く前に降下してきたガルバディア兵
国中に発せられた避難警告に人々は身を潜め
兵士達が飛び出してくる
いつか起きる月の涙へ向けて用意されていた数々のシステム
近頃姿を現した“魔女”に対しての警戒の体勢
当初の予定とは違う使い方だが、その時に合わせて用意していた数々の事がどうにか被害を食い止めている
だが、あの建造物が報告通りのものだと言うなら、これから月の涙が起きる
戦力が足りないな
危険は出来るだけ少ない方が良い
使えるモノなら、使える戦力は出し惜しみしてる場合じゃない
会談の場だった狭い室内は、報告と指示を求める兵士や役人で溢れている
体面や体裁に構っている暇は無い
その判断のまま、片隅にそのまま残されている彼等の姿
少なくとも敵じゃない
その上、同じくガルバディアと敵対している
報告を受け指示を出し続ける相棒に視線で合図を送り、彼等の元へと足を運ぶ
「当国はガルバディアの襲撃を受けている。其処で、君達に協力要請したい」
彼等はSeeD、戦いのプロ
ソレが有り難いことにこれだけの人数が居る
今此処に居る者を使わない理由は無いから
さあどうする?
「受けて貰いたい」
最も、断らせるつもりは無いけどな
 

 To be continued


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