月の涙4



 
落ちていく
月の涙と共に、アデルが地上へと落ちていく
ルナベースから遠く離れ設備が壊れてしまった今、1つめの封印には意味がない
アデルを閉じこめた入れ物の外側についた2つ目の封印は、地上へと落ちる衝撃できっと解けてしまう
宇宙から地上へと向かう短くて長いその間に強い衝撃を受けてアデルが命を落とす事は………
―――魔女は死なない
………無い
地上へ向けた警告は間に合っただろうか?
零れ落ちていく月の涙が小さく見える
「頼んだぜ」
地表へと辿り着いた筈の彼等へ向けて祈る様に言葉が零れた

時間が無い
遠く空の向こうに出現した小さな点は、時間が存在しない事を告げている
エスタ国中に伝えられる勧告
一般市民は外へと出てはならない
戦闘要員以外の者は速やかに、避難をしなければならない
長い間発せられた事のない、絶対の命令
人気の絶えた街中に現れる兵士達の姿
彼等の大部分は武器を手に空を眺め
少数はガルバディア兵と対峙する
部屋の片隅でSeeD達と話をする彼奴の姿
戦力は幾らでも欲しい
俺は実際に彼等の戦いを見た訳では無いが、SeeDを名乗るならそれなりの戦力にはなる
次々に飛び込んで来る情報
月の涙の到達地点
兵士達の配備箇所
それぞれの兵力
そして、月から地上へと帰ってくる人々の着陸地点
刻々と代わる状況に判断を下す度に配備と作戦が変わっていく
話を続ける彼奴等の様子を見ながら、SeeDを割り振る箇所を頭の中で組み込んで行く
SeeD達個々の戦い方や武器は知らないが、その辺りの事は一度は戦闘を見た筈の彼奴が上手くするだろう
彼奴も解らないところは、SeeD達が独自にどうにかするはずだ
状況を読み、最善と思われる判断を下す
短いガーデン生活で幾度と無く叩き込まれた兵士としての心構えは今も変わらず叩き込まれているはずだろう?
短い話し合いが終わったのか、彼奴がこっちを振り返った

「アデルが落ちてきます」
蒼白な顔をして飛び込んで来た役人が告げた一言に小さな部屋が凍り付いた
「ちょうど先ほど発生した月の涙の通り道にアデルがっ」
今にも泣き出しそうなその声に反応したのは、俺達へと指示を出していた2人の男
視線を交わしたのは一瞬
「連れて行くぞ」
「頼んだ」
交わされた言葉はほんの一言
「サイファー、ゼル、キスティス、セルフィ」
気が付けば、アデル対策に借り出されていた
 

 To be continued


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