提示された作戦の内容を反芻し、それぞれがそれぞれの理由で思い悩んでいる オダインの作戦を敢行するために必要なのは、ある人物の存在 エルオーネ――― スコールやラグナ達が最も巻き込みたくはないと思っている人物 厳密に言えば、必要なのはエルオーネの力 そして、その力は見知った人物であるならば遠く離れた場所からでも行使する事ができる そう、見知った人間ならば……… エルオーネはアルティミシアの事を知らない このまま、遠く離れた安全な場所で力を振るうことは出来ない エルオーネが力を行使する為にはどうあっても 一度はアルティミシアと相対しなければならない アルティミシアの目的がエルオーネの力を利用した先にある限りは、エルオーネが近づく事自体は安全かもしれない だが、それは絶対的な安全の保証ではない あくまでも推測の上に推測を重ねているだけの事 実行した末に、間違っていたでは話にならない これ以上危険な目には遭わせたくない けれど、時間圧縮が行われなければ、遠い未来の先まで“魔女”の恐怖を抱えたまま進んで行かなければならない、アルティミシアという魔女が生まれるその瞬間まで……… それが自分達が生きている間の事では無いことは解っている そして多分、時間圧縮が行われれば、間違いなくアルティミシアの元へと辿り着くことが出来る ………同時に、過程は解らないがアルティミシアを倒すことができる事も、知っている キーワードは、イデアが継承したというアルティミシアの力 力の継承を済ませた事で息絶えた、アルティミシアの話 そして長い時間を置き表面化した“アルティミシア”という人格 アルティミシアが過去へと干渉してきた背後にあるのは、エルオーネと同質の力―――エルオーネの力を元に作られたという機械――― その機械はエルオーネのソレよりもよほど制約があり、一定の時代までしかさかのぼることが出来ないと言う 一定の時代―――オダインが理論を完成させたその時 それはごく最近の事、ここ1、2年の出来事だという それならば、何故アルティミシアはそれよりも過去に現れる事が出来た? それはエルオーネの介在を意味はしていないか? そして、死を目前にしながらも魔女の力の為に死ぬことが出来なかったというその姿は……… それは戦いの傷痕、“誰か”が戦いを挑み勝利したというその証 オダインが示した数々の根拠と証拠は、理屈では理解できている だが、感情はそれとは別だ 大体、そこにあるのは“魔女”を倒せるという根拠だけで、その過程がどうなっているのか示すものは何一つ無い 作戦に関わった人間が全て無事なのか 時間圧縮の影響で、何か重大な事が起きていないか、それは何一つ解らない 緊迫した、長い沈黙が続く 誰もが言葉を言い出すことが出来ずにいた 会議室の様子は全て見えていた、全て聞こえていた
To be continued
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